第34章 呪いの器(三成君)
三成「舞様が反応をみせた物事を組み合わせると、関ケ原で大きな……それも天下を二分するような大戦が起こる。
そして東と西に分かれて戦うのは私と家康様。という事態が予測できました。
しかし信長様が天下統一を成そうとしている今、私と家康様が大戦を起こすはずがない。
だとすれば舞さまが恐れた大戦が起こるのはまだ先のこと。家康様も居ない上に今この戦を企てたら歴史の流れに反することになり、ワームホールが開くのではないかと考えました」
家康「……頭が回りすぎるって凄いね」
家康は皮肉りながら感心している。私も同意だった。
SF・ファンタジーの娯楽がある現代人なら思いつくかもしれないけど三成君は戦国時代の人だ。
時間の観念も現代人と違うのに三成君は凄すぎる。
「ねえ、佐助君はどう思う?」
佐助君を見ると表情のない彼がわかりやすく驚いていた。
佐助「すごいな。舞さんの反応で歴史を予測してワームホールに挑んだのか。
ちなみに三成さんはいつ関ヶ原で戦いをしようと思い立ったんですか」
頭の回転が速い者同士、通じるものがあるのか会話は滑らかに進んでいく。
三成「昨夜のことです。
供養塔を建てた寺の住職が言ってくださったんです。動物の魂というのは人間の魂よりも綺麗で純粋だと。
毎日大勢の人に心を込めて供養してもらったのだから、安らかに旅立っただろうと。
それを聞いて舞様をこの時代に呼び戻したい気持ちを抑えきれなくなりました」
「三成君…」
三成君はずっと私の肩に手を回している。
この人は私に会いたい一心で、本来信長様のために使う頭脳を私のために使ってくれたんだ。
私はワームホールが発生するのを待つしかなくて、なんて無力なんだと嘆いてばかりだった。
そのあいだ三成君はどうしたらワームホールが開くか考えて、こんな信じられないようなことを実行しようとしたんだ。
(三成君の愛情は純粋で真っすぐなだけじゃなく、もっと激しいのかもしれないな…)
綺麗な横顔を眺めながらそう思った。