第34章 呪いの器(三成君)
「み、三成君、このメモ…じゃない、書きつけは何か聞いてもいい?」
(徳川家に戦を仕掛けるつもりですって言わないよね?
目の前に家康が居るのに!)
ハラハラしながら質問すると、まばゆい笑顔を向けられた。
三成「ああ、ご安心ください。あれは舞様に帰ってきていただくための作戦です!
なかなかあなたが帰ってこないので、こちらからワームホールに呼びかける方法はないかと考えたのです」
「ワームホールに呼びかける作戦?どういうこと?」
三成「歴史上、家康様と私が関わる大きな出来事を、家康様がいらっしゃらない状況で為そうとすれば、ワームホールが家康様をこちらに返してくださるのではないかと思ったのです」
「えぇ?ちょっと待って」
頭が痛くてこめかみを押さえた。
関ケ原の戦いでぶつかり合うのは確かに三成君と家康だ。
(片方が居なければ成り立たないのはわかるけど…なんで?)
「あの書きつけの内容って、教えてな…あ、そうじゃなくてどうしてあんな感じになったの?」
未来の出来事は三成君にも教えていないのに、どうして書付けが史実に沿った内容になっているんだろうか。
三成「全部舞様が教えてくださったことです。
舞様はここにある地名や『東軍』『西軍』といった言葉を聞くたび不安そうにしていました。
その他、私と家康様がうまくいっていない時があると過剰な反応を見せていました」
「え、あ……」
ここは教科書で習った戦国時代と違うところが多いから学校で習ったそのままに戦が起こるわけじゃない。
そう思いながら、どこか現実になるのを恐れていたのは事実だった。
(それにしてもだよ…。
そんなにわかりやすい反応をしていたの?)
この時代の人に歴史を知らせちゃいけないのに、なんでもかんでも顔に出る自分が恨めしい。