第34章 呪いの器(三成君)
「そうだ…事件はどうなったの?犯人は千代姫じゃなかったよね?」
事件のことは未来でいくら調べても手がかりはなく、千代姫のことをずっと心配していた。
三成「千代姫は無実でしたよ。千代姫もあなたの帰りをずっと待っていました。
私の部屋に舞様宛の手紙がたくさん届いております」
「そっか、やっぱり千代姫じゃなかったんだ。
手紙も嬉しいし、三成君にも会えて、ほんと……良かった…」
また泣き出した私を三成君は胸にとじ込めるように抱きしめた。
恋人の温もりに涙はなかなか止まらず、いつまでもグズグズしていると三成君の腕が緩んだ。
三成「私の部屋に参りましょう。
ここは書庫ですからお慰めする場に相応しくありません」
「え、ここ、書庫なの?」
そういえばここがどこか何も見ていなかった。
見慣れた本棚を見て『あ、ここは…』と思っていると背後から大きなため息が聞こえた。
家康「今更なに言ってんの。どこをどう見ても安土城の書庫でしょ。
それとも1年で記憶無くすくらい物覚え悪いの?」
(あ、まずい……家康が居たの忘れてた)
焦りで涙がピタリと止まった。
「まわりを見てなかっただけだよっ」
佐助「春日山の書庫も広いけど、安土城の蔵書数もなかなかだな…」
「佐助君…」
(う、佐助君に大泣きしてたの見られたよね)
やっちゃった…と視線を逸らすと、床にたくさんの書きつけが散らばっていた。
(三成君の字だ。またこんなに散らかして…)
世話焼き根性に火がつく寸前、書きつけの内容が目に飛び込んできた。
(ん?『関ケ原』『徳川家』………!?)
読める文字を追って散らばったキーワードを集めていくうちに、とんでもない事実に気が付いた。
(何これ。まさか関ヶ原の戦いの準備してるんじゃ?)
関ヶ原の戦いはまだずっと先の出来事のはずなのに、今計画してるのはおかしなことで、私は混乱しながら三成君の着物を引っぱった。