第34章 呪いの器(三成君)
三成「舞様っ、おかえりなさい!
お待ちしておりました」
「え、三成君!?」
ぎゅうと抱きしめられて相手の顔が見えない。
自分の首元に顔をずらすと柔らかな銀灰の髪と見慣れた着物が見えた。
こんな特徴的な髪色は1人しか居ない。
落ち着く匂いも間違えるはずがなかった。
そっと顔があがると会いたいと恋焦がれた三成君と目が合った。
たくさん話したいことがあったのに、こみあげてくる想いが大きすぎて喉がふさがった。
嗚咽で言葉がでない代わりに涙が浮かび上がる。
三成「ずっと待っていました。あなたがこの世にいないと思うと毎日息が苦しくて、このまま戻ってこなかもしれないと不安で堪りませんでした」
「うん……!うん………!私も…!」
しばらく抱きしめ合った後、三成君が何かに気が付いたように身体を離した。
三成「お加減はいかがですか?頭痛や胸痛(きょうつう)はありませんか?」
男性にしては高めの声は優しさにあふれていて、ああ、三成君だと実感するとまた涙がこぼれた。
「グス………っ、胸、苦しい」
私の一言に三成君が険しい顔をして事前に用意していたのか大量の札(ふだ)を私に持たせた。
(な、ナニコレ?いつも大量の札を胸もとに入れてたってこと!?)
三成「毎日供養塔に通って手を合わせたのですが、まだ動物達が成仏していなかったのかもしれませんっ」
強引に手渡された大量の札同士が、手の中で擦れあってカサカサと音をたてた。
「違うよ、ごめんね、苦しいのは三成君に会えて嬉しいから。嬉しすぎて苦しいの」
三成「それは安心しました。
私も舞様とこうして会えて胸が苦しいです」
照れくさい言葉も今は素直に受け止められる。
溢れる愛しさで私達は目を外せず見つめ合った。