第34章 呪いの器(三成君)
家康「あの男ならやりかねないね」
「えぇ…?前から話は聞いていたけど佐助君の上司ってやばいんだね」
佐助「やばい人だけど、ついていきたいと思える人だ。
今度紹介するよ」
「う、うん…?」
家康「そこは断っていいんじゃない?
あんな物騒な奴、あんたには合わない。ぼさっとしてる三成が似合いだ」
「ぼさっとしてないよ!」
家康「はいはい。どーせ三成の全部がいいんでしょ。
そのにやけ顔どうにかしたら?」
「にやけてないよ。ちょっと緩んでるだけ!」
抗議の声をあげた時、頭上に黒い雲が湧きだしてきて雨が降り出した。
私達は同時に目を合わせ、こくんと頷いた。
「家康、手を離しちゃだめだからね」
家康「当たり前でしょ。
1人で帰ったらあいつに何を言われるかわかんないし」
つんとした表情の奥に緊張が見え隠れしていて、家康の手を強く握った。
「大丈夫、すこしグラッとするだけだよ。
しっかり手を握って目を瞑っているだけでいいから」
家康「2度目だからそんなに気にかけなくていい。
1度目は寝てる舞を抱えてたし」
「え、おんぶしてくれたの家康だったの?
てっきり佐助君かと…!」
佐助「二人とも雷がきますっ…!」
「っ!」
警告の一瞬後、全身に痺れるような衝撃が走り視界が白くなった。
ぐにゃっと歪んだ視界と遠ざかる雷雨の音。
3人とも覚えのある感覚に気を引き締めて手をつなぎ合い、佐助君が『1、2、3』とカウントして、まだ10にも達しないうちに浮遊感がおさまった。
「わぁっ!?」
佐助「っと、大丈夫?」
家康「鈍すぎ…」
着地に失敗した私を二人が支え、体勢を立てなおしかけたところで二人が『あ…』と声をそろえて手を離した。
「え、ちょっとまだ早いって、わっ、ころぶ~~~!!」
しっかり繋いでいた手になんの意味があったのかと転ぶ覚悟をした時、正面から誰かに抱きこまれた。
軽い衝撃に痛いと思う暇もなく、優しい声で名前を呼ばれた。