第34章 呪いの器(三成君)
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(姫目線)
ワームホールの兆候があらわれたということで、私達3人は発生予測地点である本能寺跡にやってきた。
石碑周辺は観光客が訪れることもなくひっそりとしている。
佐助「良かった。この調子だと煙玉とかんしゃく玉のW使いをしなくて済みそうだ」
「佐助君ったら、人避けにそこまでしなくていいのに」
アハハと笑う私の隣で家康はすっかり呆れ顔だ。
家康「そういう強引なところ謙信にそっくり。
けど何日か前までワームホールの兆候がなかったのに本当に開くの?」
そう言いながらも家康はしっかりと着物を着ていて、私と佐助君もタイムスリップするつもりで着物姿だ。
佐助「昨夜とつぜん兆候が現れたんですが、発生確率から考えても戦国時代に行けると思います」
家康は『そう』とだけ返事をした。
予想以上に長く帰れなかったから、あちらの情勢や徳川家のこととか気にかかっていてることがたくさんあるんだろう。
気追った雰囲気を漂わせる家康に、
「家康。もう何度も言ったけど、ついてきてくれてありがとう。
お礼にあっちに帰ったら雑用でもなんでもお手伝いさせてね」
家康「あんただって針子の注文がたくさん溜まってて忙しいんじゃないの?
それにしばらくは三成が離さないと思うけど」
「忙しくても手が空いた時はお手伝いするから。
三成君が離してくれなかったら一緒にお手伝いしに行くよ」
家康「一緒に来ないで、絶対」
私はふふっと笑って時計を確認した。ワームホールの発生予想時刻まであと数分だ。
三成君に会える気持ちで胸がはち切れそうだ。
佐助「俺は謙信様に何も言わないで出てきたから正直帰るのが怖い。
会った途端、100%斬られる」
「え、斬るフリじゃなくて?」
佐助「真剣でズバン!だ」
佐助君がエア刀を上から下に振り下ろした。