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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第34章 呪いの器(三成君)


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呪いの簪のみならず、さくら姫の件も明るみになったことで椿は取り調べののち自害を命じられた。

自害の場に用意されたのは懐剣や短刀ではなく呪いの簪のみ。

正当な物で自害したいという要求を三成は断った。


三成「信長様のお言葉です。『貴様が手にかけた者達の魂を、己の命で禊しろ』だそうです。
 もしあなたがどうしてもとおっしゃるようでしたら、獣や毒蛇が生息する山に捨ててこいとも言われています。
 その後、遺骸を探し出し、この簪を心臓に突き立てることになっております。
 どちらが人らしい最期を迎えられるでしょうか。あなたに与えられた最後の選択です」

椿「最後…これで最後…?
 私はどうしても死ななくてはならないの?」


呪いの簪で喉を突くか、山に捨てられて獣の餌食になるか、そんな絶望的な選択を迫られて椿は青白い顔で放心している。

髪はぼさぼさに乱れ、化粧っ気のない顔は極度のストレスでげっそりしている。

とても一大名の正室だったとは思えない風貌だった。


三成「ええ。自害しなくてはならないのも、あなた自身が選択したことです。
 人や獣の命を軽く扱った結果です。椿様に夕夏姫がいらっしゃるように、さくら様には夫と娘が、獣達にも命の営みがあったのです」

椿「男達は戦になれば何人も人殺しをするくせに、何で私だけ…っ!」


三成は腰にさげている刀に悲しげな視線を落とす。


三成「椿様が言うとおり私達は戦になれば人を殺します。死後、地獄に落ちるのは確かなことでしょう。
 大義のため、国を守るため、理由を並べても命を奪った罪は椿様と変わりません。
 私達は命を奪った罪を背負って、その者達から奪った未来を、今よりも良いものに、太平の世に導いていきたいと思っています。
 椿様。あなたは地獄に落ちる覚悟があって呪いの器を作ったのですか?」


椿は答えられなかった。

ただ目障りだったから、憎いから殺した。

白粉の粉が着物に落ちたら手で払うように、椿が生活するうえで不愉快なさくら姫と千代姫を払ってやっただけ。

そこに志はなく、人殺し、獣殺しが罪だとも思っていなかった。


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