第34章 呪いの器(三成君)
光秀「奥方は千代姫にやっていない証拠をみせろと言ったが、奥方がやったという証拠は笑えるほどたくさんあるぞ?
逆に千代姫がやったという証拠はひとつも出ていない。
さて先程呪いの器がどう作るか説明があったと思うが、作ったという証拠をしかと確認していただこう」
光秀は証拠物として持ち出していた大量の動物の骨を全員の目に触れるように置き、残酷な所業を現実としてつきつけた。
広間の人間は一斉に顔をしかめ夕夏姫は『なんとおぞましい…』と着物の袖で顔を隠してしまった。
光秀は大名を真っすぐに見据え、あえて冷やかに告げた。
光秀「よく見てもらおう。
この骨の量、50の獣の骨にしては多いと思わないか?」
よく見ろと言われても女達や商人は真っ青になって視線を下げ、まともに見ているのは大名と他数人だけだ。
光秀「その男は呪いの器を『2度』作るよう命じられたそうだ。
今回が2度目なら1度目の呪いの器は誰に使われたかわかるか?
大名よ、お前の周囲で亡くなった人間が居なかったか?」
指摘された大名は驚愕の表情で椿に顔を向けた。
大名「まさか、お前、さくらを…?」
千代姫も『まさか…』と呟いて体勢を崩し、お付きの女中に支えられた。
三成「失礼ですが亡くなる前のさくら姫はこちらの簪と同じようなものをお持ちでしたか?」
千代姫を支えているのは元は千代姫の実母さくら姫の女中だった。
三成は木箱の蓋が開けて美しい紫真珠があしらわれた簪を見せた。
恨みが深ければ美しい姿になるという記載通り、その簪は広間に居た者を魅了する美しさがあった。
女中「な、亡くなる数か月前、北の御方が椿様に貰ったと大層大事にしていた根付に同じ紫真珠が付いておりました。
ま、まさか……あれも呪いの……?」
女中は視線だけを椿に投げかけた。
後ろめたいことがなければまっすぐ受け止めればいいものを、椿は逃げるように顔を背けている。