第5章 姫がいなくなった(元就さん)
「事情をお話しますので、扉を閉めて頂けませんか?
元就さん以外には聞かれたくないので…」
元就「わかった…」
扉を閉めて、いつも通り施錠する。
振り返ると舞は椅子に座っていて、足元には見覚えのない袋が置かれていた。
(この女…こんな荷物は持っていなかったはず…)
身一つで連れてきたはずの女が、見覚えのない荷物を持っている。
忍びではなく妖術使いか何かに見えてきた。
元就は近くの椅子に座った。
「まず最初に…突然いなくなって、突然現れて申し訳ありませんでした。
驚かせてしまいましたよね。私自身、目が覚めたらここではない場所で寝ていて驚いたんです」
元就「ここではない場所で寝ていた、ってどういうことだ?」
「目が覚めたら私の部屋で寝ていたんです」
元就「ほらを吹くなら、もっとマシな嘘をつけ」
拳銃に手をかけると、舞が慌てて両手をあげた。
「お願いです、話を全部聞いてください。私がどういう人間なのかを、突然消えて現れた現象についても全部聞いて、それでも信じられなかったら…好きにしてください」
疑われる悲しみに胸を痛ませながら、訴えてくる。
舞は従順そうに見えて、こういうところはしっかりしている。
元就は拳銃をサイドテーブルに置いた。
元就「一応聞いてやる。だが信じられなかったら海に放り投げるか、一発ぶちこむかだ。覚悟しろよ?」
「は、はい」
身を縮めた舞は膝の上でギュッと洋服を握り締めた。
(洋服……そうだ、なんで舞は洋服なんて着ているんだ?)
他国と取引があるからこそ見たことがある洋服だが、日ノ本では着ている人間を見たことがない。
それに舞が着ているものは、洗練された形をしている。
元就「……?」
「実は私は…………」
その小さな口から聞かされたのは、衝撃的な内容だった。