第1章 日ノ本一の…(上杉謙信)(R-18)
小姓「尚文、謙信様のお部屋の掃除に行くぞ」
「はい」
謙信様の部屋に女性は入れないことになっていて、その代わりを小姓が務めている。
掃除道具を持ち、先輩の小姓と一緒に向かった。
一通り掃除を済ませた後、部屋の花瓶に生ける花を広げる。
小姓「尚文、このさらしは使わないのか?」
そこにはお湯で洗ったさらしが衣桁に干してあった。
湯気が細くあがっている。
「あ、それは私達が部屋を出るまではそうしておいてください」
小姓「なんでだ?」
「今日は空気が乾燥しているので、気休めでも部屋に湿気をと思いまして。
謙信様が喉を傷めないように…」
本来ならば一晩中濡れた布を干しておいた方が良いのだけど、そうはいかない。
(何か良い手はないかしら…)
そう考えながら花を生けていく。
小姓「尚文は花の生け方が綺麗だな」
「そうですか?ありがとうございます」
一応これでも姫です!と心の内で胸を張り、古い花を手早く片付ける。
小姓「なんだか時々尚文のことが女に見える」
「信玄様のような事をおっしゃらないでください」
小姓「胸まで触って確かめていたものな、あれは俺も驚いた」
「まったくです」
ははっと心許して笑ってくれる先輩に申し訳なく思いながら、掃除道具を手に持った。