第34章 呪いの器(三成君)
舞の首にかけられている皮紐の先に桃色のお守りがついている。血色が悪いせいでお守りの桃色がやけに映えて見えた。
家康「そのお守り、あの娘が作ったんだ。
呪いの簪を使っていたってわかった後『私にできることをする』ってね。
寺で厄除けしてもらったって言ってたけど効いてないみたいだ」
佐助「そうとも限りませんよ。呼吸がままならければ人はすぐに死にます。
数日も生き延びているんですから、お守りが効いているのかもしれません」
今はお守りでも祈祷でも、不確かなものに望みを託すしかなかい。
佐助「ところで現代に連れて行けば良くなるというのは本当ですか?」
家康は寝ている舞から無理やり視線をひき剥がすようにして佐助を見た。
無表情を貫きっぱなしの佐助に複雑な気持ちになりながら、三成から聞いた話を聞かせてやった。
家康「三成がそう予測したんだ。
本によると呪いの紫斑が出たら最後、『呪詛した本人の死亡』『呪いの器の破壊』『生贄の成仏』。この3つの条件が揃わなければ死から逃れられないそうだ。
事件が解決していない今は呪詛人の死亡と器の破壊は不可能だし、殺された動物達も供養してすぐに成仏するとは限らないでしょ。
500年後に行けば3つの条件を一度に解決できる。
舞が未来の人間だから可能で、唯一助かる道なんだ」
佐助「紫斑があらわれたら500年後に連れて行ってほしいと書いてあった理由はそういうことだったんですね。
しかし生贄とは何のことですか?」
家康「二人から聞いてないの?
呪いの器を作る時……」
呪いの簪を作る過程を家康から聞いて、佐助の眉が寄った。
この男も表情を変える時があるのかと家康が興味深く見ている。
佐助「動物愛護的にも個人的な感情としても許しがたい話ですね」
家康「動物…愛護?なにそれ」
佐助「生類憐みの考え方は徳川…あ、家康公、その説明は大人の理由で割愛します。
それにしても現時点で次のワームホールがいつ開くか確定していないのに三成さんは思い切った選択をしましたね」