第34章 呪いの器(三成君)
三成「まず光秀様には安土の使者としてお城に入っていただいた方がいいと思います。
私が来た時と同じく、明日の早朝に到着するように早馬を手配し昼前に城へいらっしゃってください」
気落ちしていたように見えた三成だったが、仕事ともなると言葉はハキハキとして迷いがない。
光秀はそんな三成に簡潔に返事をした。
光秀「わかった。その手筈でいくとしよう。
証人は全員出席できるのか?」
三成「はい。手筈は整っております。
明日の昼、光秀様をお待ちしております」
話が終わり、三成は開きっぱなしになっていた文を丁寧にたたみ始めた。
頓着のない男なのでいつもは大雑把に二つ折りにするだけだが、まるで恋仲からの文をしまうように折り目にそって畳んでいる。
光秀「その文は家康からのようだが舞の様子はどうだ?」
文を畳んでいた手がピクリと震えた。
張り詰めていた糸が切れた瞬間を光秀は見ていた。
三成「それはもうお元気でいらっしゃるようですよ。
早く帰って差し上げたいです」
三成は泣くように笑った。