第34章 呪いの器(三成君)
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(姫目線)
簪を手放してからというもの、私の体調はみるみる快方へ向かった。
服薬しても治まらなかった頭痛や悪心は綺麗さっぱり消え、以前と同じ生活が送れるようになった。
これでもう体調の心配をしなくてもいいと安心していたある日。
家康の診察で頭皮の一部が紫に変色していることがわかった。
触ってもわからないし家康に指摘されるまで気づかなかった。大丈夫だろうかと不安がこみあげる。
家康「あのまま使い続けていたらヤバかったかもね。
この周辺だけ髪の毛が細くなってるし養分を吸われていたのかもしれない」
「髪まで細くなってるの?見えないから全然わかんなかったよ」
肌色が変わっていたのは簪が軽く触れていたところだった。
簪が血を吸った光景を思い出して背筋に悪寒が走る。
「治るかな?」
家康「体調が回復したんだ。
直接触れていた部分だから時間はかかるかもしれないけど治るはずだよ」
「三成君が心配するから安土に帰ってくるまでに治っているといいけど」
家康「皮膚を柔らかくする薬でも塗っておけば?
病でそうなったわけじゃないから皮膚の生まれ変わりを待つしかない」
肌のターンオーバーに任せるだけで治るなら、たいした症状じゃないんだろう。
皮膚の変色と聞いて怖かったけれど、家康がなんでもないという態度だったので安心した。
身近に医療に通じている人がいて頼もしい限りだ。