第34章 呪いの器(三成君)
九兵衛「私の調べでは大名はシロです。
疑いが濃厚なのは千代姫、正室であり千代姫の義母の椿様、椿様の娘である夕夏姫の御三方(おさんかた)のうち誰か、ですね」
九兵衛の報告を受けている間、光秀の視線が犬猫よりも大きく、おそらく狐だろう骨に止まった。
屍は野ざらしにされてほぼ白骨化していたが、石台にはまだ皮や肉がカラカラに乾いてこびりついていた。
光秀「ここが山崩れを起こしていたら証拠は流されていただろうな。
運はこちらに向いているようだ」
遥か彼方に見える山肌が茶色の面を剥き出しにしている。
山崩れを起こした現場は大名の城下を挟んだ向かい側だった。
九兵衛は頷き、ヤレヤレと周辺を見て回った。
九兵衛「しかしこんなにたくさんの証拠を残していただいて、ありがたいものです。
骨を砕いて川へ流すとか、そこまでしていただいたら証拠をつかむことはできなかったでしょうに」
九兵衛は原型をとどめたままの骨を見て皮肉っている。
犯人の大雑把な性格を表すように周辺には骨以外にも証拠物が残されていた。
付近に転がっていた木桶には茶色に変色した血がこびりつき、桶の内側に残っている線の位置から、相当量の血を溜めたのだとわかる。
その木桶には茶色い筋が左右に5本ずつあり、犯人の指の形をしている。
九兵衛はまっ先にその桶を証拠物として押収し、その間に光秀は窯の周辺をよく見て回った。