第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
幸村「あぁ?どこにいたんだよ」
「義元さんがみつけてくれたのっ!」
信玄「はは!確かに雷蔵を長くしたような出で立ちだな」
義元「皆で何をしているのかと思ったらこの子を探してたの?
ほら、お前は舞のところへお帰り」
義元が舞に渡そうとするとハムスターは義元の肩へ登ってしまった。
「義元さんが気に入っちゃったのかな」
義元「可愛いね。舞が良ければ飼ってもいい?」
舞がにっこりと笑って言った。気のせいか笑みが黒い。
「ええ、もちろん」
兼続「!雷蔵の友を連れてきたと、さっき言っていなかったか?」
「どうせ私は『本当に重い』んですよね。おしゃれしてきたのに『変わってる』んでしょう?ふん、だ」
つーん!と横を向いた舞に、兼続が顔色を悪くした。
玻璃の瞳が静かに舞の洋服に向けられた。
義元「兼続がそんなこと言ったの?酷いよね。
袖口なんて変わった形をしているし、この辺は肌が上品に透けていて素敵なのに」
パフスリーブブラウスの袖や、部分的にシースルーになっているところを褒められて、舞の顔がふわりと上気した。
「流石義元さん!良かった…わかってくれる人が居て!
あ、それでそのハムスターは『くっきー』っていう名前なんです」
義元「へぇ、くっきーって確か南蛮の菓子の名前だっけ」
「そうです。兼続様は興味がないそうなので、義元さんにあげ……
爪の先まで整った手がスイと伸びてきて、くっきーを捕まえた。
兼続「『あげない』だ。誰も興味がないとは言っていないだろう。
それに『変わっている』とは言ったが……」
「言ったが……?」
兼続が苛立たしげに息を吐いた。