第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
佐助「まさかと思ったけど本物だ。舞さん、おかえり…。
ところで3人で何をしているんですか」
一番に佐助が駆けつけた時には、謙信と兼続と舞は広間の畳に這いつくばっていた。
兼続「佐助、早く襖をしめろ!」
佐助「え?」
その足元を小さい影がちょろりと通っていった。
「ああ、せっかく連れてきたのに、外に逃げちゃった」
謙信「っ!!佐助、どうしてくれるっ」
佐助「落ち着いてください、謙信様」
謙信が刀をスラリと抜いて詰め寄り、佐助は焦って謙信と距離をとった。
幸村「どうしたっつーんですか、こんな夜中に」
「あ、幸村!!ただいまっ!挨拶は後でゆっくりする!
ゴールデンハムスターが逃げちゃったの、まだ近くに居ると思うから一緒に探してっ!」
幸村「ごーる…?」
耳慣れない単語に幸村が聞き返そうとすると、舞が険しい顔をして睨んできた。
「雷蔵の、胴が長くなったやつ!!!!早くっ」
幸村「こえっ……」
鬼気迫る顔で舞に怒鳴られ、幸村も探し出す。
幸村「雷蔵の胴が長くなったやつって、どんくらい長ぇんだよ…」
ブツブツ言いながら幸村は庭に降りて探し始めた。
信玄「んー?やっぱり姫の声か。おかえり」
「あ、ただいま帰りました、信玄様。
私が連れてきたハムスターが居なくなったんです。申し訳ないのですが、その辺の足元を見てもらえますか?」
信玄「わかった」
菜々子の性格を心得ているので、ハムスターが何かわからずとも探し始める信玄。
しゃがんでから幸村に小さい声で『ハムスターってなんだ?』と聞いている。
義元「やあ、舞。おかえり。
皆心配していたんだよ。やっぱり『あっち』に帰っていたの?」
次から次に挨拶してくる連中に、舞は内心『もう!それどころじゃないのに!』と愚痴る。
「はい、目が覚めたらあちらに居て……」
義元に説明しようとして、その手にハムスターが乗っているのを見て駆け寄った。
「居たっ!皆さん、居ましたよ!!」
這いつくばっていた全員が安心したように身体を起こした。