第13章 優しい君へお礼を籠めて1(2015/12/5 赤葦誕生日夢)
赤葦は文房具と手袋両方を改めて見て口を開こうとした刹那、背後から大声が響いた。
「赤葦――!そろそろ始めるぞ――!」
威勢の良い声は木兎で間違いなさそうだ。赤葦は軽く溜息を付いてから再度告げた。
「本当にありがとうございました」
「そ、そんな事ないからっ!お礼ずっと言えてなくてごめんなさい!」
「誕生日プレゼント、本当に嬉しいです」
にこっと笑った赤葦の表情に優は耳まで真っ赤にして固まった。そして慌てて携帯の画面を見て言う。
「も、もうこんな時間!早く帰らないと……くしゅんっ!」
気が緩んだ所為で今更の様に寒さに身体が反応を示した。寒さでくしゃみが出てしまった優を見て赤葦は言う。
「ちょっと待っていてい下さい」
「?」
優が首を傾げている間に赤葦は駆け足で部室の方へと走っていき、すぐに戻ってきた。その手には控えめな色合いのマフラーが握られていた。
「寒い中ずっと待たせてしまいましたので使って下さい」
赤葦はふわっと優の首にマフラーを回す。それに優はまた大慌てで言う。
「そそそそんな事したら赤葦君寒くなっちゃうから私はだいじょう……」
優が全部を言う前に赤葦の人差し指がちょん、と唇に触れて言葉を遮る。まるで手馴れている様な行動に茹蛸の様に真っ赤にならずにいられない。
「俺なら大丈夫ですよ。どうせ今から大騒ぎするのですし。それに……」
「?」
「それが合ったらまた話をするきっかけが出来ますよ。急がないので届けてくれると嬉しいです」
にこっと笑うと赤葦は体育館の方へ戻っていった。寒い渡り廊下に一人残された筈なのに優の身体は全く寒さを感じていない。それなマフラーの所為?それともこの収まらない動悸の所為?
「……今度はちゃんとすぐに返さないと」
真っ赤に染まる頬を押さえながら優は小さく呟いた。
◆
翌日、優は紙袋に入っているマフラーをぎゅっと抱きしめながら登校していた。
昨日のドキドキが収まらない。自分はどうしてしまったのだろう、と悩みながら校門を通り過ぎ、教室へと入る。
まだ早い時間帯の登校は人が少なく閑散としている。ソッと赤葦の机を見ると部活がある所為なのだろう、鞄が置かれていて登校している事が一目で分かった。
「大丈夫、大丈夫」