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ハイキュー 短編夢小説集

第13章 優しい君へお礼を籠めて1(2015/12/5 赤葦誕生日夢)


控えめにラッピングをしてもらい後はこれをずっと返せていなかったから、と言って渡すだけ。それが簡単に出来れば悩む事もないのだが。

「ふぅ…………がんばれ、私」

 グッと握り拳を作りながら意気込んで歩いていたのだが、ふと目に留まったある物に優は目を奪われた。

「…………これ」





「…………」

 朝から動悸が治まらない。今日は遂に赤葦の誕生日、だ。ずっとお礼を出来ずにいたもどかしさから解放される。
 ただ一言声をかける、あの日のお礼とずっと返せずにいたので新しく買ってきた物を、と伝えるだけ。
 ――――優にそれが出来る訳がなかった。
 何時もと全く同じでただ遠くから赤葦の事を見つめていて時間が過ぎ放課後。部活がある赤葦はHRが終わったらすぐに部活へと行ってしまった。

「…………はぁ、そうだよね。世の中そんなに都合良くいく訳ないのにね」

 カサ、とシャープペンと消しゴムが入った紙袋を寂しそうに優は眺めていた。折角赤葦が誕生日であると言う情報を入手する事が出来たのに、消極的な優にはきっかけにななれなかった。

「………………」

 優は寂しそうな表情をしながらそっと視線を自分の鞄へと移した。教科書やらに紛れて見えるのはシンプルなラッピング袋が一つ。
 本当は買ってしまった、誕生日プレゼント。渡せない可愛そうなプレゼント。
 十二月の日没は早い。少し感傷に浸っている間に辺りは漆黒に包まれていた。十二月の空気は刺す様に冷たい。コートも着ずに制服でずっと体育館近くの渡り廊下に座っていた優は身体の心まで冷え切ってしまっていた。

「風邪引く前に帰らないと……」

 凍える両手を擦りながら立ち上がった瞬間、少し離れた体育館のドアが開いた。油断しきっていた優が驚きながら見る先に立つのは赤葦。
 冬場でもハードな部活内容なのだろう、額の汗をぬぐいながら出てきた。
 きっと部室に向かうのだろう、と早足で去ろうとした刹那。

「橋本さん、どうしたんですか?こんな所で」
「あ……赤葦君」

 まさか声をかけられるだなんて夢にも思っていなく、驚きを隠せない。伝えたい事、したい事があるのに緊張で動く事が出来ない。
 優の様子を黙ってみていた赤葦はゆっくりと尋ねる。

「俺に何か用でもありますか?」
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