第13章 優しい君へお礼を籠めて1(2015/12/5 赤葦誕生日夢)
本当は話をしたい。色々と赤葦の事を知りたい。
ただ目で追うだけの今が優にはもどかしく、でもどうすればいいのか分からずにいたのだった。
でもそんなもどかしい毎日に転機が訪れた。
「赤葦!そー言えばお前そろそろ誕生日だよなっ!」
放課後一番に姿を見せたバレー部の先輩だと言う人が赤葦にそう話しかけてきたのだ。
面白楽しそうな表情でいる彼に向かって、赤葦は何時もと変わらぬ落ち着いた様子で答えていた。
「そう言えばそうですね」
「だよな、だよな!じゃあ五日はバレー部で盛大に誕生会するしかないな!」
「木兎さん気持ちだけ貰っておきますので問題を起こす前に止めて下さい」
彼……木兎のテンションの高さに対して、赤葦は落ち着いた様子で対応をしていた。
いや、そんな事はどうでもいい。赤葦の事を全く知らなかった優にとって、木兎が接げた情報は飛び跳ねる程嬉しい。
赤葦の誕生日が近々来る。きっとこれが赤葦へ近付く事が出来る最初で、最後の、チャンスであると優は理解した。
◆
「…………何が良いのか分からない」
放課後学校帰りに駅前のショッピングモールへと足を運んだ優だったが、重要な事を忘れていた。
接点が何もない赤葦の趣味が分からないのだ。分かっている事と言えばバレーをやっている、と言う事だけ。
何色が好きなのか、甘い物は大丈夫なのか。プレゼントを贈る為に必須である事を何一つ知らない。
ただのクラスメイトである子からいきなり誕生日だから、と言ってプレゼントを渡されても困るだけではないのか。貰った物が趣味ではない物でただ迷惑だけだったら。
そんなマイナスの考えが頭の中を駆け巡り、色々な物に手を伸ばしてみてもすぐに手を戻してしまう。その繰り返しで時間だけが過ぎてしまっていく。
「どうしよう……迷惑にだけはなりたくないもん」
そんな事を考えていた結果、結局辿り着いたのは文房具売り場。結局半年近くも返せずにいるシャープペンと消しゴム。初日以来使ってはいないのだけれどそれをそのまま返すのは気が引けて。
シャープペンと消しゴムだったら学生の必需品であり、元々借りていて返せていなかった物なのだから迷惑にはならない筈。
あまりにもあじっけない、と思いつつも迷惑にならないプレゼントはこれ以外考えられないのでそっと選びレジへと向かった。