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ハイキュー 短編夢小説集

第13章 優しい君へお礼を籠めて1(2015/12/5 赤葦誕生日夢)


 きっかけはそう、本当に些細な事。進級一日目にしてまさか、の筆記用具を忘れてしまっている事に気が付いた。何度鞄の中を見ても筆箱の姿は無く。
 新しいクラスに友達がいない訳ではなかったのだけれど、忘れるなんて夢にも思っていなかったので友達に声をかける、と言う発想が頭に出ずに兎に角混乱。
 初日から担任に注意されてしまうのかとパニック状態に陥りそうになった刹那、すっと目の前にシャープペンと消しゴムが。
 何が起こったのか分からずにそれをジッと見つめる。二つを持つ手は明らかに女子の手ではなく男子の手。恐る恐る視線を上へと上げると初めて見る相手。

「えっと…………」

 クラスメイトである事は間違いない、でもいきなり差し出された二つに驚きを隠せずにいると柔らかい物腰で言われた。

「筆記用具忘れたのですよね?俺予備持ってきているのでよければ使って下さい」

 そっと手渡すと自分の席の場所へと彼は戻って行った。場所は……近い席なんかじゃなかった。
 離れた席の自分に気が付いてくれたと言うその優しさに耳まで真っ赤になった。


 それが彼、赤葦京治とのファーストコンタクトだった。



2015/12/5 赤葦京治誕生日祝い
優しい君へお礼を籠めて



 二年の初日に出会ったクラスメイトの赤葦京治。先生でもクラスメイトでも常に敬語口調で話をしている丁寧な子なんだと思いながら、優は彼の事を遠くから見つめていた。
 あの日借りたシャープペンと消しゴムを返す勇気とタイミングが掴めずに、時間だけがただただ過ぎてしまっていた。
 彼はバレー部に所属していて後輩からも先輩からも信頼されている事も、放課後教室に来る他の部員達の様子を見て分かった。
 クラスメイトであっても仲が良い訳でもなく本当に『ただのクラスメイト』である優は、赤葦と話をしない。彼はまるで雲の上の存在であるかの様に遠いのだ。


 時間とは残酷なモノで当たり前の様に流れてしまい、気が付いたらもう十二月を迎えてしまうまでに進んでしまった。


 勿論それまでの間に赤葦と一回も喋らない、と言う事はなかった。授業の一環で同じグループになった事もあるし、文化祭や運動会で話す事は何度か合った。
 でもそれはあくまでもただのクラスメイトとしての会話であり、友人知人の会話ではなくて一言二言で終わってしまうモノしかなかった。
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