第8章 宮治夢 雨降って地固まる
治の言葉にホッとしていると、治の視線に気が付く。
ハンバーガーを頬張りながらも、視線は紙袋にいっている。
甘味が気になるのかな、と思い紙袋を持ちながら尋ねてみる。
「此処で食べる事は出来ひんけど、見てみる?」
「気になるさかい見たいな」
治の返事を聞き、ガサガサと紙袋の中身を取り出してテーブルに並べていく。
金平糖、どら焼き、練り切りと順番に出していくと治は興味津々で尋ねてきた。
「へぇ、色々買うてるんやな。この丸い箱の中身は?」
「金平糖」
「ほなこっちのデカい箱は?」
「練り切りやで」
「練り切り?」
和菓子に興味がなく、それに男じゃあ当然の反応だと思い、箱を開けて中身を見せる。
「動物や!」
「新作、って言われて可愛かったさかいついつい買うてもうてや。こないに可愛いと食べるのちょい勿体のう思てまうでね」
話しているけれど、治の興味は完全に練り切りになっていて動物の種類を見ながら言うのだ。
「狐、狐はおらへんのか?」
「狐?」
「俺達の学校、『稲荷崎』やろ?稲荷言うたら狐や」
成程、と思いながら買った練り切りの動物達を見て指さして答える。
「狐はこの子かいな?」
「めっちゃええな」
予想外に食い付きが良くて驚きながらに見ていると、治は言うのだ。
「白い狐はおらへんのか?」
「白い子?」
言われて練り切りが入る箱を見るけれど、白い動物は兎やパンダであり、白狐はいなかった。
付き合い長く、たまに試作品の試食をさせてもらう位にあの甘味処とは仲が良い。
でも、今日知り合ったばかりの相手の願いをお願いするのは、やっぱり気が引けてしまう。
どうしよう、と思っていると治が言った。
「なぁ、その甘味処って何処にあるん?」
「……え?」
「やから、これ作ってる甘味処何処にあるのか、って話」
急にどうしたのだろう、と思うと治は言ってきた。
「ちょい興味出た、先輩さえ良かったら行くの付き合うて欲しい」
意外な所で甘味仲間が出来るのかと、嬉しく思ってしまう。
洋菓子も良いけれど、やっぱり和菓子の方が好きだったから。
「全然ええで!何時行こか!」
ついつい、声量が大きくなってしまい、すぐに周りの視線に気が付き縮こまってしまった。
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