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ハイキュー 短編夢小説集

第8章 宮治夢 雨降って地固まる


 通り雨と言うには土砂降りで、暫く止まないだろうと雨空を見上げる。

「ついてへんかったなぁ」

 濡れる頭をタオルで拭きながら、苦笑いをした。
 下校途中、ついつい行きつけの甘味屋の女将さんと話し込んでしまい、急いで帰らなければ、と早足で歩いていた。
 が、駅に到着する前に雨が降ってきてしまったのだ。
 人通りも雨の所為でなく、通学路ではないので友人が通り掛かると言う期待も出来ない。

「止むまで、雨宿り決定やな」

 ふぅ、と一息付き腕の中に抱き抱えている紙袋が濡れない様に、と持ち直す。
 行き付けの甘味屋で買った練り切りが入っている。
 動物モチーフで可愛くて、ついつい買ってしまった物だ。
 他にも金平糖やどら焼きなど、買い込んでしまったのだけれど、甘味が好きなのだから、仕方ない。
 濡れたら困るので小さくなりながら雨を見ていると、バシャ、バシャ、と水の跳ねる音が聞こえてきた。
 一定間隔のその音は足音を物語っていて、通行人が来た事を意味する。
 人もいない所で恥ずかしいなぁ、と思って地面を見ていると、水音が止まった。


 そして、視界の端に足が見えた。


 ゆっくりと顔を上げるとそこには少年が一人。同じ学校の制服を着ている。
 通学路じゃない所に同じ学校の生徒がいるなんて珍しいと見ていると、少年は空を見て、雨宿りしている姿を見て口を開いた。

「駅、行くんか?」
「え……あ、うん……」

 頷くとちょいちょいと手招きされた。
 けれどすぐに土砂降りの雨である事を思い出したのか、此方に来て言う。

「俺も駅に行く用事があるし、傘デカいから入れていこか?この雨暫く止みそうにあらへんし」
「えっ……え、でも……」
「減るモノちゃうし、止むの待っとったら時間減んねん?」

 その言葉に申し訳なさそうにしながら、傘の中に入れてもらった。
 男性向けの大きな傘は確かに二人分入れる程の広さがあった。
 同じ学校の人間とは言え、見知らぬ相手と相傘になり、緊張してしまう。
 しかもそれなりの高身長で、見上げなければ顔を見る事も出来ない。

(身長高いし、バスケ部やら、かなぁ……)

 そう言えば学校のバレー部が強いと聞いているけれど、さして興味が無かったので知らなかった。
 どうしても身長が高いとバスケ部のイメージの方が強いのもあったけれど。

「ほな行こか」
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