第7章 *及川徹&岩泉一夢 恋愛相談箱 両片思い
「岩ちゃーーん!俺の話を聞いてよぉ!」
自分の机に伏せって泣き言を言う及川徹の旋毛を見ながら、岩泉一は青筋を立てていた。
恋愛相談箱
両片思い
「いや、聞かねぇぞ。俺の机から退け」
「岩ちゃん酷い!話聞いてよ!」
顔を上げる及川にチョップをかましながら、岩泉は落ち着いた様子で言う。
「そう言う時のお前は下らない事しか言わねぇから断るって言ってんだよ」
「俺の気持ちが伝わらないんだよぉ!」
「テメェ人の話聞いてるか?」
勝手に話出そうとするので、先手を掛けると及川は恨めしそうな顔で岩泉を見てくる。
そもそも相談内容を言われる前から、この及川の様子をみれば、なんの事なのか分かる。
ビジュアルから無駄に女の子受けが良い及川なのだが、性格からもどんな子にも良い顔をしようとする。
それによって無駄に同性に嫌われたり恨まれたりしているが、それは及川の自業自得である。
そして、その己の性格が災いしているのだった。
「俺が声掛けても軽くあしなわれるし、全然意識してもらえてない!」
「そりゃあ及川相手だからな」
「岩ちゃん酷い!」
くぐっと握り拳を作り、及川が勝手に話し出した。
「だってさぁ!向こうはバスケ部キャプテンだし、ベリーショートに高身長で男に見えなくもないし、顔の造りも悪くないから女の子にも人気だし!」
「僻みは醜いぞ」
「そうじゃなくてぇ!」
ダン!と机を叩くので、及川を一発殴って黙らせる。
ノックダウンしている及川に岩泉はハッキリと告げた。
「誰にでもチャラチャラしてる様な男なんて、相手にしないに決まってるだろうが」
岩泉の正論の塊の一言に、及川は瞬殺されるのだった。
◆
及川が余りにもウザイ為、岩泉は逃げる為に意味もなく校内を彷徨いていた所、聞き覚えのある声に立ち止まった。
「大丈夫?重いでしょ?持つよ」
この声は間違いない、と角を曲がると見慣れた姿を見付けた。
女子と言うには長身で百七十を越す身長に、短く切り揃えられている短髪。
女子の制服を着ていなかったら、後ろ姿では男に見えてしまう容姿だった。
「田嶋」
声を掛けるとパッと振り向き、岩泉を見て返事が返ってきた。
「はじめじゃん」
「ブラついてたらお前の声が聞こえてな」