第6章 花巻貴大夢 ボーイシュークリームガール
ただ、余りにもシュークリームガールに勝てなくて悔しいのだ。
勿論、花巻が先にシュークリームを手にしている事だってある。
その上で、負けると悔しいのだ。
「…………はぁ」
昨日食べられなかったシュークリームの事を思い出すと、余計に空腹になってしまい恋しさすら感じていた。
◆
「今日こそシュークリーム!」
ズンズンとコンビニに向かって歩いていると、丁度シュークリームガールが店内に入っていく姿が見えた。
「マズイっ!」
慌てて店内に入り、デザートコーナーへ直行。
シュークリームに手を伸ばしているのを見て、花巻はガッとシュークリームを掴んだ。
が、それはほぼ同時であり二人で一つのシュークリームを掴んでいる状態だった。
「…………」
「…………」
目が合い、沈黙が流れる。
そしてその沈黙を破ったのは、二人ではない声だった。
「おかーさん、シュークリームなかったよー」
二人の間に割り込む様に入ってきた幼稚園児位の男の子。
陳列棚を見ながら言うので、互いに見合ってからスっとシュークリームを差し出して言った。
「「 どうぞ 」」
シュークリームを受け取った少年は、嬉しそうに母親の所へと走っていってしまった。
その姿を見ながら、花巻はシュークリームガールに声を掛けた。
「ラーメン好きか?」
「普通」
「近くに美味いラーメン屋あるから行くか?」
「行く」
返事を聞き、花巻はシュークリームガールと共に珍道中へと向かっていく。
シュークリームガールは口数が多くないのか、無言のまま花巻の後ろを着いてきている。
チラッと見ると荷物の中に工具箱が合ったので、流石工業高校だと思いつつ、珍道中の暖簾を退けて中へと入った。
「ここの豚骨ラーメンマジ美味いから」
「へぇ」
キョロキョロと店内を見ているので、チョイチョイとカウンター席に呼ぶ。
すとん、とシュークリームガールが座ったのを見てメニュー表を渡して言う。
「チャーハンも餃子も美味いけど、女子はんなに食えないか」
「工業系だから力作業多いし、他の子よりは食べれると思う」
「じゃ餃子半分こでもするか。おっちゃーん!」
ラーメンと餃子を注文し、残さず完食をし、満腹で満足した心でシュークリームガールと別れるのだった。
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