第5章 *孤爪研磨夢 無色少女
「いっぱい人いる!ボール飛んでる!」
翌日、クロが行きたいと言った地域のバレー教室がやっている体育館に、彩香も着いてきていた。
出掛ける話を聞いた彩香はすぐに母親の所に飛んで行き、一緒に行きたいと騒いだ。
彩香が非常に興味を示している、と言う事で母親達は駄目とは言えずに、彩香も一緒に行く事になったのだった。
「研ちゃんは何やるの !? てっちゃんはどれやるのっ !? 」
興味津々に俺とクロの服を引っ張りながら尋ねる彩香に、俺は答えた。
「俺は付き添い。クロは……知らない」
クロの付き添いでレシーブをやっていると、ボールを打つ人達がいた。
あっちの方が格好良いと思っていると、俺達は背が低いからネットが高くて、スパイクは打てないと言われた。
でも、すぐに通りかかったオトナがネットを下げれば良いと言い、ネットを下げてもらってスパイク練習をさせてもらった。
その時のクロの表情は本当に嬉しそうであり、更に小さい彩香の為に下げたネットで、スパイクを打たせてもらった彩香も同じ顔をしていた。
この日からクロのバレー好きはウザくなり、同時に彩香もクロがいる時は好んでバレーをやる様になったのだった。
「研ちゃん、今日は何を観てるの?」
「クロに借りたバレーの試合のDVD」
「私も観る!」
俺の隣にちょこんと座った彩香に言う。
「彩香、バレー好き?」
「好き!」
「おばさんに聞いたけど、彩香の家の近くのチームに入ったの?」
「うん!」
にぱにぱと屈託ない笑顔で彩香は答えた。
その姿に何とも言えない気持ちになったのを、俺は言い出す事が出来なかった。
◆
「研ちゃん!てっちゃん!『烏野高校』どうだった !? 」
ゴールデンウィーク、昔音駒高校と付き合いが合ったと言う宮城にある烏野高校との練習試合をする為に、合宿に出掛けた。
そして帰ってくるや否、彩香が犬だったらはち切れんまで尻尾を振っていそうな姿で感想を求めてきたのだ。
「あーー、面白い奴らだったぞ」
「強い !? 」
「まだまだ弱いなぁ」
「てっちゃん強気だね!」
クロの言葉に彩香は烏野高校にも興味を持ちそうな勢いだった。
そんな彩香の姿と、烏野高校で出会った日向の姿が重なる。
そして、絶対に会わせたくないな、とクロと出会った時の事を思い出して思った。