キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第8章 #5 英雄
そう言ってきたのだから、俺は視線を合わせないまま、ボソリと呟き答えた。
「……絶みてぇに強そうじゃねぇ」
俺の言葉にすぐに反応したのは母親だった。スパンと頭を叩きながら、怒り言う。
「こら勝己!アンタ何失礼な事言ってるの !! 」
叩かれた頭の痛みと期待はずれの不服から、ブスっと口を尖らせてると、益々母親の怒りを買ってしまったらしい。
「アンタねぇ !! 初対面から失礼な態度取ってるんじゃないわよ!地殻さんに失礼でしょ !! 」
もう一発叩かれるかと言う所で、母親を宥める様に大地が止めに入ってきたのだった。
「まぁまぁ子供の素直な感情ですし、家内相手にしていて期待してしまったのならば、仕方ないですし落ち着いて下さい」
大地の言葉に母親の怒りは収まったのか、本当に申し訳なさそうな表情で頬に手を宛てながらに言っていた。
「地殻さん、本当にごめんなさい。ウチの馬鹿息子初対面からこんなに失礼で」
「元気な証拠で良いじゃないですか。子供の内から我慢ばかりして大人しいよりも、正直で素直な子の方がのびのび育ってる証拠ですよ」
「地殻さんが気にしてないのならば良いんですけれどね……」
大地と話す母親の様子を見て、俺は正直驚いていた。
気の強い俺の母親を言葉一つで大地は収めてしまったのだ。父親だったら絶対にこうはならない。
大地の言葉だけで、あっさりも引き下がったのについ口が開いていると、近寄ってきた出久が笑顔で言ってきた。
「命ちゃんのお父さんね、なんだか話してるとふんわりした気持ちになるんだよ。話してると安心するんだ」
そう言ってくるのだから、改めて大地の事を見上げた。
大地の口調に特に特別性は感じない。けれど、声のトーンや話すスピードを聞いていると、心地良さを感じる気がした。
そして声量がある訳じゃないのに、何故か透き通って一言一言が聞きやすい。
こんな話し方をする人間を俺は初めて遭遇した気がする。
「絶は勝己君でも出久君でも命でも悪い事したら拳骨だもんな。人の子だから、って甘やかさない大人は初めてだろうから、絶が強く見えてたんだよね?そうしたら、絶の旦那はもっと強い奴だ、って思って当然だよな」
ニコニコと笑顔を崩さずに俺に尋ねてくるのだから、調子が狂う。ポケットに手を突っ込んでブスっと横を向きながら、俺は答えた。
