キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第8章 #5 英雄
そう言う大地の表情はやっぱり優しいのだけれど、何処か寂しさを感じる様な視線であった。
まるでそれは個性社会である今を望んでいないかの様で……。
「おとーさんおとーさん」
思考を遮るかの様に命の声がした。
命の方に視線を戻すと、大地に向かって命は手を伸ばして言う。
「肩車!」
「命は肩車好きだね」
「違う!出久とかっちゃん!」
ふるふると首を振りながらに言う命に、母親は大地の事を見上げながらに言う。
「そう言えば地殻さんって身長高いですよね。何センチあるんです?」
「図体ばっかりデカくて、百八十八ですね」
「まぁ!そんなに!道理で大きいと思ったわ」
母親の驚く声を聞き、そう言えば大地の頭は周りから飛び出ている事に気が付いた。
表情や口調は優男だけれど、ちゃんと見るとしっかりとした体格をしているし、中肉中背と言った所だろう。
「おとーさんに肩車してもらうと、凄い高いの!」
興奮気味に俺達に言ってくる命。その表情を見ていると嫌だとは言い出しずらく、つい出久と顔を合わせてしまう。
「で、でもそんなに高いと落ちたりしないかな……」
ボソボソと出久が言うと、大地はしゃがみ込みつつ笑顔で答えてきた。
「大丈夫。落としたりなんかしないから、髪の毛とかちゃんと掴んでくれていれば落ちないよ」
大地の言葉に出久はモジモジしていた。ビビりの出久なのだから恐怖心があるのだろう。でも、それを上回る位の興味が天秤に掛けられているのだろう。
肩車なんてそんなに珍しい事じゃ無いけれど、出久の父親は海外転勤をしていていないのだから、父親と言う存在に肩車されるのに憧れがきっとあるのだ。
「取り敢えず試してみようか。それで怖かったら降りる、でね」
大地の誘い文句に迷っていた出久だったが、小さく顔を赤くしながらに頷いていた。
大地はその姿を笑顔でいて、元気良く言うのだった。
「じゃあまずは出久君からだね」
そう言うと大地は子供を肩車するのに慣れていたのだろうか。それとも子供を肩車する事が大地には簡単な事なのか、ひょいっと担ぐとすくっと立ち上がった。
大地が立った事によって出久がとても遠い位置へ行く。それを見ていると、命がギュッと手を握りしめてきた。
物凄く嬉しそうな表情をしながら。
「……うわぁ!」
頭上から突如響いた出久の歓声。
