キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第8章 #5 英雄
まだ個性発現はしていないけれど、将来オールマイトを超すヒーローになるのが目標の俺にとって、個性を上手く使える様に教えてくれる大人が欲しい。
それを絶よりも強い筈の大地にして欲しかった。
(絶よりつえー奴になってナンバーワンヒーローになれば……)
そうなれば俺は堂々と命の事を護ってやれる。
命はヒーローになりたがっている様子はねぇし、一般知識を身に付けて来たとしても、世間知らずなのは変わらない。
俺がちゃんと傍に居て、護ってやんねぇとならない。
「いやぁ、いい歳してるのについつい緊張しちゃうな」
車のハンドルを切りながら言う父親の言葉に、母親はスパンと頭を叩いていた。
俺の家ではこの力関係が当たり前で、正直父親が情けないと思う時がある。だから、グイグイ引っ張ってくれる男に憧れずにいられない。
(早く着かねぇかな、ショッピングモール)
ついつい持ってきてしまったオールマイトのウルトラレアのカードを見ながら、口元が自然とニヤけてしまっていた。
◆
「いたいた!ごめんなさいね〜!待たせちゃったかしら?」
駐車場に車を停め、親に手を引かれて向かった先に見慣れた姿があった。
「かっちゃん来た!」
出久の声のする方を見ると、何時もだったら絶対に張り付いている命の姿が無かった。
出久の母親に絶。そしてその絶の隣に立っている男の腕に、命は抱き抱えられていた。
「かっちゃん!お父さん降りる!」
俺の姿を見て、命はぱしぱしと肩を叩いて降ろしてもらう。そうするとすぐに俺の元へと駆け寄ってきて言うのだ。
「かっちゃん早く早く !! 」
興奮気味の命の手に引かれ向かう先に立つ一人の男。
コイツが大地なのかと、見上げるとすぐに俺達の目線に合わせる様にしゃがんでくれた。
「初めまして、君が勝己君臨かな?命がね、昨日の夜からずっと君と出久君の話しかしないんだよね」
そう話し掛けてくる大地の事を見る。
命の毛先の色と同じの緑色の髪に、焦げ茶色の瞳。絶とは真反対で鋭い目付きはしていなく……一言で言うならば『優男』だ。
「…………」
顔に全て出ていたのだろう。大地は俺の事を見ながら苦笑いしながらに言うのだった。
「あれぇ?もしかして俺期待はずれだったかな?」