キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第8章 #5 英雄
「へぇ地殻さん家、旦那さん帰って来るんだ」
「そうそう!それで今度三家族で出掛けようって話になってね。ほら、この間出来たショッピングモールあるでしょ?」
親の話に聞き耳を立てながら、読んでいるフリをしている図鑑を掴む手に力が篭ってしまっていた。
命の父親、大地が帰って来る。
その事実に俺の心は落ち着かなかった。
『あの』絶が選んだ相手である大地はどんな奴なんだろう、と。
そこら辺の男より強いし、ヒーローじゃなくて下手したら敵みたいに悪どく強い絶。と、言う事は大地も強い奴なのだろうかと、ワクワクしてしまう。
両親の力関係を見ていると余計に大地に対しての憧れが強くなっていく。強くて、凛としている絶の隣に立つ強い男。
(どんな奴なんだろ……絶対に絶よりも強い奴なんだろうな)
命が大好きだと言うのもあるが、俺が身近の人間で一番強いと思っている絶のパートナーに期待せずにいられない。
口数が多くない命なのに、今日一日ずっと饒舌の様に大地が帰って来ると話し続けていた。
その姿に出久はずっと「良かったねぇ」と頭を撫でながら話を聞き続けていた。俺も話を聞き続けていたが、命に大地の事を聞いても望む返事は貰えなかった。
(どんな個性持ちなんだろ……絶も教えてくんねぇけど、大地は教えてくれるかな)
俺としてがらにも無く、早く早く来週末が来れば良いのにと心躍らせてしまうのだった。
◆
週末、親の運転する車に乗りながらソワソワと外を見ていた。
俺の家族と出久の家族と命の家族での出掛け。出久の父親は仕事の都合で不参加となっていた。
俺の家だけは少しだけ離れているので、現地集合となった。
「良い天気で良かったなぁ」
運転しながら言う父親に空を見上げた。
雲一つない晴天。絶や命の髪色を思い出す程に澄み切った空色をしていた。
「緑谷さんと地殻さん達はもう到着したって」
スマホを弄りながら言う母親の言葉に鼓動が早くなっていく。まだ見ぬ大地への期待で胸が踊る。
勿論命が喜んでいる姿を見たいし、『地殻家』の大黒柱である大地を早く見たかった。
(個性の使い方教えてくれたりしねぇかな)