キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第6章 #3 果報
初めて見た現物に俺も出久も空いた口が塞がらない。
「おーちゃん」
ポツリ、と命が言うと出久は完全に興奮した様子で口を開いた。
「ほほほ、本物のオールマイトのウルトラレアカードっ !! 命ちゃんす、凄い!」
キラキラと金色に光るカードに、出久の様に興奮した声を出さなかったが、俺も内心気が気ではなかった。
欲しくて欲しくて仕方ないカードが目の前にあるのだ。それも持ち主はカードに興味が全く無い命。
そもそも突然買う、と言い出した時点で違和感があったのだけれど、命の強運がこのカードの存在に気が付いていたのだった。
だから欲しがったのだ。
「いず……」
カードを見つめ、これ以上ない程までに興奮している出久の方にカードを出しかけて命の手が止まった。
そして、ゆっくりと俺の事を見てきたのだ。
カードは一枚。欲しいと思っている奴は二人。命は俺達二人に対して差別は絶対にしない。
暫くじーっとカードを見ていた命は辺りをキョロキョロと見回しだした。そして、すぐ近くにあるコンビニに気が付くと、母親の元に走っていってしがみついた。
「お母さん!これもう一個!」
「はぁ?お菓子は一人一つの約束でしょう?」
「あそこでもう一個!」
引かない様子の命に、命の母親は俺と出久の事を見て溜息を付いてから言った。
「もう一つだけだからね。お菓子は三等分してちゃんと食べる事」
「うんっ」
母親からの約束事に命は必死に首を縦に振っていた。
そして母親から五百円を受け取ると、命は小走りでコンビニへと走っていく。
そしてすぐに出てきて、その手にはヒーローウエハースが握られていた。
「かっちゃん開けて!」
珍しく急かすな、と思いながら封を開けて渡してやる。
そして、命がカードを取り出すとそれは先程と全く同じ輝きを放ったのだ。
大の大人が何十個と注ぎ込んでも出ないカードを、命はたった二百円で二枚も出したのだ。
「みみみみ命ちゃん二枚もウルトラレアのオールマイト !! 」
興奮して鼻息荒くなっている出久を見て、二枚になったカードを命はさも当たり前の様に、俺達に差し出してきた。
「もももも貰って良いのっ !? 」
「うん、出久とかっちゃんの」
俺も出久も震える手でカードを受け取った。