キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第6章 #3 果報
命が無欲な事は付き合いだしてからすぐに分かった。
何かを欲しがる事も無く、要求する事も無い。俺と出久と一緒に居たがる事に関しては主張してくる。
でも、それ以外が無いのだった。
そして、欲がない者程、運が強いのだった。
近所のスーパーへ買い物。お菓子は一人一個だけ。最近の流行りはヒーローウエハース。
ウエハースに一枚カードが付いている、と言うありふれたお菓子。
人気ヒーローのカードは無論レア度が高く、その中でもウルトラレアである金色のオールマイトのカードは高値で取引される程のレアカードだった。
そのカードをオールマイトに憧れている俺達が欲しがらない訳がなく、かと言って簡単に出る訳もなくタブりカードが増えていく日々だった。
「今日こそ出るかな!金色のオールマイト!」
目を輝かせながら袋を開けている出久の姿に、呆れながら溜息を付きながらに言ってやる。
「んな簡単に出るなら、とっくに出てるだろ」
「カードいっぱい溜まっちゃったもんね」
えへへ、と苦笑いしながら出久は命への視線を移した。
何時もは俺と出久しか買っていなかったのだが、命が今日は珍しく同じお菓子にする、と言ったのだ。
ヒーローには相変わらず興味が無い命なのだから、本当に珍しく、俺達に合わせたのは分かっている。それでも、自分から進んで欲しがったのが不思議だった。
「うわぁー、やっぱり出なかったぁ」
袋の中からカードを取り出して嘆く出久の姿を見てから、俺も袋を開けてカードを取り出した。
「……エンデヴァーかよ」
またこのカードかよ、とオールマイトでない事にガッカリしていると、袋を上手く開けられないのか、命が苦戦しているのが見えた。
相変わらずか、と思いながら命の手から袋を取り開けて手渡す。
「かっちゃんありがとう」
「ったく、上手い開け方があるって教えてやっただろうが」
「うん」
分かっているのかいないのか。命はこくんと頷いていた。多分分かってない。
「命ちゃんはどのヒーローかなっ?」
ワクワクと見てくる出久の姿を見て、命は袋の中からカードを引っ張り出していた。俺もついつい覗き込む様に見てしまった。
命が取り出したカードは太陽の光を浴びて強く反射し、黄金色に光っていた。
ウルトラレアのオールマイトのカード。