キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第5章 #2 歳月
三ヶ月前と今では語弊力もグンと上がっていて、恐らく環境が悪くて知識が追いついていないだけで、頭は良いのだろう。
環境がいかに大事なことか、命を見ていると子供でも納得が出来た。
それと同時に命が今まで何も無い誰もいない環境で生活をしていたのだと、想像が付かなかった。
最初から無ければ苦ではないらしく、命の興味は今も絵本と自然で成り立っている。
「準備出来たよ!命ちゃん、中にそおっと入れてあげてね」
「うん」
出久の言葉に従い、命はゆっくりと青虫が乗る葉っぱを虫かごの中に入れている。
虫かごの中で動いている青虫を命はじーっと眺めて楽しんでいる。
このまま虫取りを続けても良かったけれど、命の興味が青虫に注がれてしまっている以上、虫を捕まえても意味がなさそうだ。
「帰るか」
「かっちゃんいいの?」
出久が尋ねてくるので顎で命の事を指すと、出久も理解したらしく、虫かごを持ってしゃがんでいる命に伝えた。
「今日は幼虫捕まえたから帰ろうか」
「うん」
命が素直に頷いたので、今日はもう帰る事にしてやるのだった。
◆
「えー?母さん虫好きじゃないからアンタ面倒ちゃんと見れるの?」
「三人で育てんだよ」
帰宅すると文句を言われた。
まぁ仕方ないと思いながら、一番興味を持っているのはテーブルの上で虫かごを眺めている命であると言ってやる。
「命が興味あるんだから仕方ないだろ」
「全く……全員ちゃんと手を洗ってくるのよ」
命に対しては親達も甘く、駄目とは言わない。
親達がどんな話をしているのか知らないが、命には俺達ガキには教えてもらえない何かがあるのだ。
それは命の父親が三ヶ月経っても現れない事で何となく分かっていた。
現存しているらしいが、仕事が忙しく帰ってこられないらしい。
そしてその父親に付き合う為に、母親も頻繁に留守にしている。
その間は出久の家に泊まらせてもらっているらしい。
「おばちゃん」
「んー?命ちゃんどうしたのー?」
命に呼ばれ、母さんは晩飯を作っていた手を止めて命の元へと向かう。
(……『おばちゃん』か)
命の中で俺達の母親の呼び方がいつの間にか決まっていた。
自分の母親は『お母さん』、俺の母親は『おばちゃん』、そして出久の母親は『ママ』だ。