キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】
第5章 #2 歳月
命の母親が言うには初めて出来た友達である俺達への依存が強く、優先する癖がついたのかもしれない、と。
「別に何でも俺達に合わせなくていいんだぞ?」
「そうそう、命ちゃんは命ちゃんでいいんだから」
俺も出久もそう言っても、命は変わらずに首を振って主張をする。
「三人一緒がいいの」
命の言葉に出久と顔を見合わせる。自己主張をしてくれない事へと困惑と、自分達を慕ってくれている喜びが混ざり合い、説明出来ない感情が生まれる。
「出久とかっちゃんと一緒じゃないとや」
自己主張はしないが我は強い。一度嫌だと口に出してしまったら、命は自分の考えを絶対に曲げない。
仕方ないと虫取り網を振り回しながらに言ってやる。
「しゃーねーな!今日は出久と命、俺ん家に泊まりだし、三人同じ虫取ってやる!」
「かっちゃんかっこいー!」
出久の羨望の眼差しを受け、鼻が高くなりながら言う。
「出久も命も俺がいねーとなんも出来ねぇからな!」
◆
「出久、かっちゃん」
虫取りをしていた所、茂みを見ていた命がちょいちょい手招きしてきた。
「命ちゃんどうしたの?」
「なんか見付けたのか?」
出久と同時に覗き込むと葉っぱの上を青虫が動いていた。
女ならば嫌がるのに、命は全く動じずに青虫を見ている。
「芋虫だぁ」
「これ、アゲハ蝶の幼虫だろ?」
青虫を見ながら言うと出久が食い気味に言う。
「かっちゃん凄い!見ただけでなんの虫か分かるんだ!」
「ま、まぁな。これ位常識だろ?」
本当は何でも尋ねてくる出久と命に対して必ず応えられる様に、と図鑑や本を片っ端から見て頭に叩き込んでいた。
けど二人の知らない所で努力しているのを知られたくないので、知っていて当然だと言う風に何時も答えていた。
俺達の話など聞いていないのか、命は未だに青虫を眺めたままだ。
「アゲハ蝶になるまで飼うか、コイツ」
しゃがみながら言うと出久は空の虫かごを開けながら出久も言う。
「そうだね!三人で育てよう!」
うきうきとカゴの中に木の枝を入れて準備をする出久を見て、俺の手を引いて命が言った。
「飼えるの?」
虫を飼う事が初めてらしく、命の目は興味津々になっていた。
命は知らない事は貪欲に求め、吸収も早い。