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キミだけのヒーローに.......【ヒロアカ/爆豪勝己】

第5章 #2 歳月


 命が来てから早いものでもう三ヶ月の月日が過ぎた。
 最初は何をするにも出久の後ろにぴったりくっ付いて離れなかったが、最近はやっと慣れたのか出久の傍にいなくても大丈夫な事が増えてきた。
 兎に角、命は田舎者、なんてレベルの話ではなく最初は本当に大変だった。
 テレビも知らない、車も知らない、スーパーは勿論の事、コンビニも分からない。極めつけはヒーローもヴィランも分からないと来た。


 命が分かる唯一の娯楽は絵本だったらしく、お気に入りの絵本はボロボロだった。


 命の知識は絵本から得た物だけであり、絵で見るのと実物を見ることでは話も違い、同じ物をじーっと何十分でも平気で見たりしていたので、付き合っている俺達はすぐに飽きてしまう。
 魚屋を水族館と言ったり、信号も分からずに渡ろうとするから目が離せない。
 幼馴染が出来たと言うか妹が出来た、と言うのが正しい表現だった。

「かっちゃん、今日は何処に行くの?」

 俺の後を金魚のフンの様に出久と命は着いてきている。正しくは俺の後を出久が、出久の後を命が、だが。

「昨日は公園だったから今日は裏山だな」
「じゃあ虫かご持っていかなきゃ!」

 今日は虫取りだよ、と出久は笑顔で命に話している。命は何時も俺達と遊んでいて、おままごととか女っぽい遊びをしていないが、文句を言う事はない。
 そもそも命は動物が好きみたいで、虫も平気だった。

「うん」

 出久の言葉に命は素直に頷く。命は自己主張がなく、何時でも俺達二人の意見を尊重し優先する。
 命の口からあれしたいこれしたい、と言う言葉は三ヶ月経っても一度も聞いていなかった。

「行くぞ、ほら」

 俺がずいっと手を差し出すと命は当たり前の様子で手を握る。右手は俺、左手は出久。俺達だけで遊びに出掛ける時は必ずこの形で手を繋ぐ決まりにいつの間にかなっていた。

「今日はどんな虫を捕まえられるかなぁ」

 楽しそうに言う出久を命は何時もと変わらぬ表情で見ている。命は俺達に対してはそれなりに喜怒哀楽を表現出来るが、それ以外には苦手なのか口を開く事も少なくない。

「やっぱり命ちゃんは女の子だし、蝶々とかがいいかな?」

 出久が尋ねると命は首を振り言う。

「出久とかっちゃんと一緒がいい」

 相変わらずの命の主張。
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