【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第4章 二話 彼女(予定)です
「田中さんが来てくれるのが!」
「だから私は田中じゃない!」
いや、田中ゴンザレスと名乗ったのは朔夜自身で、本名を告げていない以上、影山にとって朔夜の名前は田中ゴンザレスだ。
だが、何を考えているのか予想出来ない影山に、どうしても本名を名乗りたくない。
「影山やっと戻ってきたのか」
「星海さん」
「めふっ!」
廊下を進んでいくと影山を呼ぶ声がして、歩みが止まった。
影山が大き過ぎて前が見えていない朔夜は、いきなり止まった影山の背中にぶつかって、鼻をぶつけて変な声が漏れた。
「すみません。もう戻れるので」
「戻れるって……」
星海、と呼ばれた相手は影山の後ろに人がいるのに気が付き、ひょいと覗き込んできて、朔夜と目が合った。
独特な目をした人だな、と鼻頭を摩っていると、星海は大きな声で言った。
「影山冗談じゃなくて本当だったのかよ !? 」
何の話だと朔夜が思っていると、廊下に大声が響いたのが原因なのか、チラホラと人が出て集まってきた。
バレーボールとは長身の人達がやるスポーツだと言う事は、スポーツに興味が無い朔夜でも流石に分かっている。
わらわらと長身の男が集まってきたら正直な話怖いし、朔夜はそれなりに人見知りもするので地獄だ。
「え?影山本当の話だったのか?」
「チケット渡した言ってたから半分信じてはいたけど……」
「影山、アップの準備とか大丈夫なのか?」
次から次へと集まる話してくる、で頭の中がぐるぐるしていると、両肩を掴まれて無理矢理前に出された朔夜の事を、影山は自信満々な声色で言った。
「俺の彼女の田中ゴンザレスさんです!」
「人見知りとか言ってる場合じゃないから、突っ込ませろぉぉぉぉぉ !! 」
流石に状況に耐えられなかった朔夜は、今まで生きてきた中で一番の訴えをしたと自負出来ると思った。
◆
「つまり、彼女じゃなければ、田中ゴンザレスと言う名前でもないと言う事か」
「はいそうです、田中ゴンザレスは私が悪いからいいんですけど、彼女は本当に勘弁して欲しく」
「影山、田中さんを困らせたら駄目だろう」
「牛島さん、困らせてません」
「もぉぉぉぉぉ!」
選手控え室に案内してもらい、朔夜は己が身に起こったことを正直に話した。