【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第3章 一話 出会いは最悪の一言から
なんだこれ、と朔夜が尋ねる前に影山は強めに言う。
「これ、明後日の試合のチケット!俺出るから絶対に来て欲しいです」
「試合?はぁ?」
「試合です!」
「てか明後日?いやいや急にも程が……」
状況に追い付けない朔夜を無視し、無理矢理チケットを握らせる形で押し付けられた。
そもそも何の試合なんだ、とチケットを見ようとしたら、チケットを持ったままの手をガッシリと握り締められ、影山は続けて言う。
「このチケット、関係者出入り口使える様に話付けておくんで!」
「いや、行かねぇわい!」
「待ってるんで!俺、絶対に待ってるから!」
「人の話を……」
「田中さんが入れる様に、俺準備整えておきますから」
「田中ゴンザレスは忘れろぉ!」
自分で言っておきながら、真顔で田中ゴンザレスなんて呼ばれたら恥ずかしい事に、今更朔夜も気が付いて恥ずかしさで爆発したかった。
友達がネットゲームで使ってる名前なんて使うんじゃなかった、と。
恥ずかしがっている朔夜に気が付かず、一方的に告げたいだけ告げ、影山は言う。
「門限あるんですよね?じゃあ明後日に!」
返事も聞かず、影山は足早に走り去っていってしまった。
まるで台風にでもあったかの様に目まぐるしい早さに、目が回りそうになっていた。
今まで生きてきて、こんなに疲れる数分も初めてだった。
「つ、疲れた……」
それでも開放された、と言う事実に朔夜は安堵していた。
こんな濃い数分は二度とごめんだと思いながら、そう言えばチケット、と歪んでる紙に目を落とした。
「えと……Vリーグ。…………Vリーグってなんだ?」
そう言えばスポーツ観戦なんて、テレビでだってしないタイプだったと朔夜は思うのだった。
(2021,4,14 飛原櫻)