【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第3章 一話 出会いは最悪の一言から
中の中程度のモブだと自覚している。
そんなモブにイケメンがセックスしてくれとナンパしてくるのが、そもそもありえない。
「芋女?」
「芋だよ!自他共に認める芋だよ私は!てか手の込んだ罰ゲームとか止めて欲しいんですけどぉ!」
どうせイケメン特有の冴えない女をナンパして、相手が本気にするかどうかの反応を楽しむタチの悪いアレなんだろうと、朔夜は判断していた。
そうじゃなきゃ自分が選ばれた理由もないし、納得出来る。
「罰ゲームじゃないです」
「はぁ?」
じゃあ新手のセフレ探しか、と怪訝そうに見ると影山は予想外に真面目な表情で言ってきた。
「見た瞬間に『あ、この人だ』って思いました」
「思うな、気の所為だ、酔っ払ってるだけだ」
「俺まだ未成年だから酒は飲めません」
お酒が飲めないと言う事は同年代確定だ。
アホみたいなナンパをしてきた所と、童貞であると馬鹿正直に述べた所を考えると、恋愛下手なんてレベルではなさそうだ。
不器用過ぎて暴走しているとしか思えなかった。
「十八?十九?」
「今年十九っす」
「同じ歳ぃ!」
タメかよ、と脳内でツッコミを入れながらも口から声も一緒に出た。
そろそろ相手にする事も疲れてきたし、寮の門限を考えたら一秒でも早く解放されたい。
何とか上手い解放文句がないかと頭を悩ませていると、影山が尋ねてきた。
「名前、知りたいです」
「誰が変人ナンパ男に馬鹿正直に個人情報言うかっ!」
「俺は言いました」
「あーあー、そうでしたねぇ!じゃあ田中ゴンザレスで」
「田中さんですね」
「信じるなっ!」
偽名にもならない偽名なのに正直に信じるなんて、この影山と言う人物がどんな人なのか予測出来ない。
兎に角、溜まっていると言う事だけは理解出来た。
「私もう学校の寮の門限の時間来るから、離してもらえない !? 離さないならガチで警察呼ぶ!」
離してもらえるとは思っていなかったのだけれど、予想外に影山は掴んでいた手首を離してくれた。
解放された事に朔夜が安堵していると、唐突に目の前に紙切れを突き出された。
それは長方形の紙で、まるで何かのチケットに見えた。