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【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】

第7章 五話 満員電車は吊り橋効果?


 早く車内の人間が少しでも減ればいいのに、とか乗り換え駅に着いて降りていって欲しい位しか考える事が無かった。


 つまり、満員電車の中で暇と言う事だ。


(人多い……酸素少な……)

 そんな事を思いつつ、オタクらしく妄想でもして過ごそうかと朔夜は考えた。
 満員電車で推しと推しにぴったりな女の子が、と妄想に花を咲かせようとした所で電車が大きく曲がったらしく、背中を押されてバランスを崩しかけてしまった。

(あっぶなっ!)

 倒れこまない様にと反射的に服を掴む手に力が入った。
 そのおかけで転ばずに済み、朔夜はホッと一息付いていた。
 やっぱり満員電車は嫌いだ、と体勢を立て直そうとしたらがっしりと影山に抱きしめられたのだった。

「?」

 何でまた抱きしめられたのだと思っていると、影山の胸元に耳があたる体勢となっていて、電車の走る音で気が付かなかったが、ガタンゴトンと言う音とは違う音が聞こえてきた。


ドクドクドクドク


(……心音?)

 誰かの鼓動をここまで近くで聞いたのが初めてだと、朔夜は思っていた。
 スキンシップが好きではないタイプだし、そもそも他人に抱き着く理由も抱き着かれる理由も、今までなかったのだから。
 一定のリズムを刻む電車の音とは違い、落ち着きの無い早いリズムを刻む心音。
 その音を暫く何も考えず黙って聞いていたのだが、やっと影山が今の状況に鼓動が早くなっている事に朔夜は気が付いた。


 満員電車で色々と忘れていたが、抱き合っている状態だと言う事に。


 流石の朔夜も人間であり感情がある。異性の男、ましては一般論で見たらイケメンに部類される人間に抱きしめられているのだ。

「〜〜〜〜 !! 」

 自分の状況を客観的に見たら、満員電車でイチャついているカップルにしか見えない。そう思ったら死ぬ程恥ずかしい事に気が付いた。
 瞬時に離れたいと思ったが、すしずめ状態の満員電車で身動きは取れない。
 耳まで顔が赤くなってきた気がするし、つられる様に鼓動が早くなってきた気がする。

(気付かれない様に!落ち着け私!)

 他の事を必死に考えなければ、と思えば思う程に影山の事を考えてしまう。
 胸板広いな、とか上腕二頭筋凄いとか色々と。
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