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【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】

第7章 五話 満員電車は吊り橋効果?


(どーせ付き合うならば、同じ趣味の奴がいいんだよなぁ……)

 そんな風に考えながら、チラッと影山の事を見ると大切そうにペットボトルをまだ見ていたのだ。

(まだ見てた……)

 ふぅ、と地面を見つつ溜息を漏らしているとクイッと肩を抱き寄せられた。肩にある手を見てから影山へと視線を移すと、影山は言う。

「電車、来るぞ」

 その言葉に朔夜はアナウンスが流れている事に気が付いた。そして今から乗る地下鉄の事を考えると、溜息が出ずにはいられなかった。

(座れない程に混んでるんだよな……この路線)

 さっさと帰りたかったもう一つの理由。それは朔夜が使う路線が兎に角混む事だった。
 酷い時は箱詰め状態になってしまい、身長が高いとは言えなかった為に、うっかり酸欠になり掛けた事が朔夜にはあった。
 だから、出来るだけ夜の電車は避けたかったのだが、試合観戦だけで帰させてもらえなくて満員電車コースになってしまった。

(打ち上げ連れて行かなければ……)

 つい影山の事を睨んでしまうと、影山は首を傾げながらに尋ねてきた。朔夜の気持ちを知る訳がないのだから、当然の反応である。

「どうした?」

 不安そうでも慌てている様子でもない影山に、つーんと冷たく朔夜は答えた。

「めっちゃくちゃこの夜路線混むから。この時間じゃあもう絶対に座れない」

 嫌味たっぷりに言ったのだが、影山には伝わらなかったらしい。ホームへ入ってきた車両を見ながら、影山は言う。


「分かった。じゃあ朔夜のカバン俺が持つし、俺に掴まってろ」


 嫌味が全く伝わらなかったし、別に影山に気遣って欲しかった訳じゃないので、ついつい本音の舌打ちが出てしまった。

「朔夜?」
「何でもないでーす」

 嫌味を続けた所で無意味だろうと、朔夜は割り切って満員に近い車両を見て眉間に皺が寄ってしまった。
 立っているのも大変そうだが、つり革を掴めるのか不安になってきてしまったのだ。

(宙ぶらりんコース……)

 掴めないですし詰め状態程の拷問はない。
 だが諦めるしかないかと腹を括ると、影山は車内を見てしっかりと朔夜を抱き寄せて言うのだ。

「俺から離れるなよ」
「……はいはい」
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