【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第7章 五話 満員電車は吊り橋効果?
「……え?なんでそんなに必死なの?」
「俺は朔夜だけだから !! 」
興奮しているのか、段々声量が上がっていくのだから朔夜は慌てて言った。
「分かったから!声でかい!目立つ!」
頼むから自分がある種の有名人である事を理解して欲しいと、朔夜は切実に願った。
有名人と一般人が一緒にいるなど、ましてはそれが男女となればスキャンダルでしかないのだから。
「……勝手にいなくならねぇか?」
「ならんならん」
もう精神的に疲れきってしまい、逃げようと言う気持ちも朔夜から喪失してしまった。大人しく一緒にいる方が楽だと言う事にも気が付けた。
りんごジュースにしよう、と自販機のボタンを押して取り出してから、朔夜は影山に尋ねた。
「なんか飲む?これ位ならば奢れるし」
「朔夜に貰ったら勿体なくて飲めない」
「じゃあ奢らない」
影山の返事に即答すると、慌てた様子で言ってきた。
「飲むっ!ちゃんと飲む!ただその後に入れ物を飾るだけでっ !! 」
「いや、気持ち悪いなぁ。捨てろや」
ピシャリと言い捨ててから、ICカードを出した。
影山は慌ててボタンを押したので、カードを触れて出てきたペットボトルを渡した。
「もう電車も来るし行くよ」
「おう」
受け取ったペットボトルを見ながら嬉しそうな顔になっている影山に、朔夜は眉間に皺を寄せずにいられなかった。
何とも言えない気分になったから。
(どーしたものか…………)
影山の隠そうとしない好意にどう対応すればいいのか、分からなくなってきていた。こんな風に異性に好きだと言われたのが初めてであるからだ。
断っても諦める様子は見られないし、手も足も出ないとはこの事を言うのだろうか。
(私、コイツが考えてる様な奴じゃないのになぁ……)
影山が朔夜にどんな理想を抱いているのか知らないが、出来た人間ではないし、性格だって女らしいとはとてもではないが言えない。
イケメンの隣には美女が立っていた方が絵になる。もしくは滅茶苦茶可愛い子とか。だが朔夜はどちらでもないのだ。
一緒に並んでいて不釣り合いな気がしてならないし、そもそもスポーツマンとオタクの時点で住む世界が違うのだ。
影山が熱くバレーボールの事を語っても朔夜には分からないし、朔夜が漫画アニメの事を話してもきっと影山は理解出来ないだろう。