【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第7章 五話 満員電車は吊り橋効果?
何とか影山を説き伏せて、寮の最寄り駅ではなく学校の最寄り駅で妥当してもらえた。
学校を知られるのも嫌だが、住居を知られるよりは百倍マシなので手を打った、と言う所だった。
駅のホームへ行く前にトイレに寄らせてもらって、意味も無く手を洗って溜息を漏らしていた。
バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある
五話 満員電車は吊り橋効果?
「はぁ〜〜…………」
今日限りのつもりだったのに、そうならなかった。
朔夜の予想以上に影山は諦める気が無さそうだったからだ。
影山の好意は隠す気が全くなく、ド直球に来るので疲れてしまう。
「むぅぅ……」
鏡に映る自分の姿を改めて見て朔夜は唸った。
やはり、何度見ても影山が執着する様な美女でも可愛いでもない。ここまで来ると影山の趣味を疑いたくなる程だ。
(なんで、私なんだろ……)
影山のあの容姿を見る限り、女に困るとはとてもではないが思えない。
性格は正直微妙だと思ってしまうけれど、隣に居るだけで十分な男の気がしてならない。
(性格の所為で女趣味も悪いのかなぁ……)
ぐにぐにと自分の頬を押し弄ってから、もう一度溜息を付いてから朔夜はそぉっと女子トイレの出口から外を確認した。
「…………」
やっぱり居る。勘違いや妄想じゃなく、居る。
遠くからでも長身である影山は目立つし、容姿的にも目立つ。
黙って腕を組んで立っていると、それだけでモデルに見える程である。
容姿の所為なのか、チラチラと見ている女性も多く、その中でアレの元へ戻らなければならないなど、ある種の拷問であった。
(電車も来るし、戻ろ……)
覚悟を決めるしかないと朔夜が出た瞬間に、影山は女性に声を掛けられていた。それを見て、朔夜はほぉ逆ナンか、と思って終わるまで待とうかと近くの自販機へと向かった。
お茶にしようかジュースにしようか、と悩んでいた所、ふっと視界に影が掛かったので顔を上げた。
見上げた先には、仏頂面の影山がいた。
「ん?」
「…………何で出てきたの言わない」
「なんで、って。逆ナンされてたからそっとしておこうかと」
朔夜の言葉に影山は必死に否定をしてきたのだった。その必死っぷりに、朔夜は本気で引きそうになっていた。
「逆ナンなんかされてねぇ !! 影山選手ですか、って声掛けられてサイン書いてただけだっ!」