【夢小説】バレー馬鹿は恋愛下手にも程がある【HQ/影山飛雄】
第6章 四話 部外者が打ち上げ会にいる意味ある?
逃げ出すタイミングを完全に失ったとへにゃへにゃと力が抜けていると、牛島は淡々とした口調で話し掛けてきたのだった。
「田中さんはバレーボールには興味がなかったんだったか?」
まだ牛島にとっては田中なのか、と思いつつ別に良いかと思い出してしまったのでそこは正直に頷いて答えた。
「バレーボールと言うかスポーツ全般が興味無いと言うか」
「なるほど。是非バレーボールに興味を持って、好きになって欲しい」
影山と対して変わらない事を真顔かつ、淡々としたトーンで言われてしまい、朔夜は眉間に皺を寄せながらに言う。
「バレーボールってジャイアンしかおらんの?何なの?」
ぐったり疲れ気味に呟くしか、朔夜には出来ないのだった。
◆
「へー、門限あるのか。学生寮って大変だな」
「まぁ、そこまで早い訳ではないんですけれど、一応女子寮だしあります」
星海に答えつつ、打ち上げ会がやっと終わり解放されると、朔夜の気分は上がってきていた。
名前は知られたけれど、それ以外は連絡先も知らないのだし、影山含め今此処にいる人達とは今日限りの縁だろうと朔夜は思っていた。
今日はある意味で夢でも見ていたのだろう、と割り切れば楽になれるのだから。
(帰ったらさっさとお風呂入って寝よ……。服に焼肉の臭い付いてそうだなぁ……)
あれだけ煙が多かったのだし、焼肉だから臭いが付いてしまうのは仕方ない事だと思いつつも、ついつい上着の臭いを嗅いでしまった。
やっぱり臭っている気がする。
「朔夜」
「ん?」
影山に呼ばれ顔を上げると、ジャージから取り敢えず見れる程度の私服になっている影山がいた。
何時の間に着替えてきたのだろう、と思っていた所影山が言う。
「送って行く」
「……何処へ?」
「朔夜の寮まで」
真顔で言ってくる影山の言葉を朔夜は瞬時に理解出来ず、数秒の間を置いてから口を開いた。
「わんもあぷりーず」
「寮まで送って行く」
聞き間違いではなかった、と朔夜は酷い目眩を感じるのだった。
今日限りの付き合いの筈、だったのに。
(2021,11,12 飛原櫻)