【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第26章 第二十三話 ソト
俺の名前を出しながら、日向は俺の事を全く見ずに池ヶ谷の方だけを見て駆け寄っていた。
「日向君おはよう。影山君とは来る途中に会ったから一緒なんだよ」
クスクスと笑い言う姿は何時もの池ヶ谷そのものだ。俺はこんなにも嫉妬心が出ていると言うのに。
「一緒に登校とか俺方向違うもんなー!」
「日向君は山越え通学だもんね」
「おう!毎日山越えだぜ!」
「凄いねぇ」
笑いながら話し続けるので遮る様に口を挟む。
「さっさと自転車置いてこいよ、ボケ日向」
「誰がボケだ、誰が!」
頬を膨らませる日向にハッキリと言ってやる。
「お前以外に誰がいる、誰が」
「ぐっ……朝から嫌な奴だな!」
キッと睨んでから日向はがしゃがしゃと音を鳴らしながら駐輪場へ向かって走り出す。自転車を置きに行くのだろう。
「影山のバーカ!バーカ!」
「誰が馬鹿だ!ブン投げるぞ!」
「へーんだ!上手く着地してやるし!池ヶ谷さんすぐに戻ってくるから体育館で!」
「うん」
久々の会話は罵倒であり、険悪な状況が続いていて何処か何時もと違っていた。
けど笑顔で手を振る池ヶ谷の姿を見て、日向は満足そうに走っていく。日向の姿が見えなくなると池ヶ谷がぽそっと言ってきた。
「……何時もの私だった?」
「驚く位にな」
「ちゃんと出来そうかな……」
「今の見て出来なかったら驚く」
日向以外まだ来ていないのを確認して物陰に連れて行き、キスをしながら舌を絡め取った。
キスをしながら胸を揉んで、ずっとこのままでいたいと思いながら唾液の糸を引きながら離れた。
とろんとしている瞼にキスをして囁き言う。
「お前は俺のモンだよ、伊織」
もう一度キスをしてそれを再確認させると荷物を置いてくる為に俺は部室、池ヶ谷は更衣室へと別れた。
池ヶ谷の走っていく後姿を見つめつつ、このまま突っ立っている訳にもいかないので仕方ないと部室へと向かう事にした。
今からの俺達はただの選手とマネージャーの関係に戻るのかと思うと、心がモヤっとした。
池ヶ谷は俺のモノだと言えないのが悔しいと思ってしまった。
(2016,4、8 飛原櫻)