【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第24章 第二十一話 ヘイジョウシン
きっと池ヶ谷は足音に過敏になっている筈だから、合図の様にさっきの時と同じ様にココンとノックをしてから部屋へと入った。
入ると案の定、池ヶ谷は頭まですっぽり布団を被っていて隠れていた。
「伊織、飯食おうぜ」
お盆をテーブルに置きながら布団から出てくる様に呼び掛けた。もそもそっと布団から顔を出した池ヶ谷は不思議そうに俺を見ている。
「どーした?ラーメン嫌いか?」
尋ねればフルっと首を振られた。警戒している、とは違った様子でいて俺が首を傾げてしまう。
「…………それ飛雄様のだよね?」
「そうだけど最初から一緒に食べるつもりだったから」
ぽんぽんと隣を叩くともそもそと近寄って来る。するりと俺の隣に座った。流石に裸で飯を食わせるのは気が引けたので着ていたパーカーを肩に掛けてやる。
パーカーに驚いた池ヶ谷に当たり前の様に告げる。
「流石に裸で飯は無理だろ」
「う、うん…………」
もそもそとパーカーに手を通し、チャックを上まで閉めて一息付いていた。服があるのはやっぱり落ち着く様だ。
だぼだぼのパーカーを着ている姿もなかなか悪くない。池ヶ谷はサイズが合ってない服がエロくて似合うかもしれない。
ちょこんと隣に座っているが小さくなっている感じがしてならない。
「絶対に誰にも見つけさせねぇから」
俺の言葉に池ヶ谷はハッと顔を上げる。不安げな表情は相変わらずでいた。
「伸びるから食べよう」
「……うん」
箸は一本しかないから池ヶ谷に先に食べる様に促す。控えめに食べる姿を眺めていたらバチッと目が合う。
「た、食べる?」
おずおずと尋ねる姿が可愛らしく、ちょっと考えてから口を開けて言う。
「あーん」
食べさせろ、と言う意思表示に池ヶ谷は困った表情をしてくる。早く、と急かせばラーメンの汁が溢れない様にと手を添えながら口へ運んできた。
パクッと食べて次と要求すればおずっと口元にラーメンを運んできてくれる。
まるで介護でもしてもらっている様な食事だったのだけれど、俺に尽くしてくれているみたいな池ヶ谷の行動にどうしようもない幸福を感じてしまった。
「……すっげー幸せで死にそうだ」
「え……?」