【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第21章 第十八話 イワカン
身体に染み付いた癖と言うモノはなかなか抜けない。朝五時には必ず目が覚める。体作りをする為に身に付いた癖だ。むくっと上半身だけ起こし、暫くの間考え込む。
夏休みに入っているが東京遠征も控えていて、朝から晩までみっちり部活だ。春高に行く為にも練習を欠かす事は出来ない。
早朝のランニングは日課であり、行くべきなのだが腕の中で眠り続けている池ヶ谷を見て悩んだ。
置いて行けばいいのだけれど昨日の今日だ。不安になってしまう。部活に行くのも悩む位だ。
一人悶々悩んでいる間に考えている事が口から洩れていたらしく、ブツブツ一人呟く声に池ヶ谷が目を覚ましてしまった。
「……おは、よう?」
寝起きで寝ぼけている池ヶ谷の頬に、張り付いている髪の毛をどかしてやった。……が。
「っ !! 」
池ヶ谷がビクッと怯え縮こまったのだ。首を絞められた恐怖が身体に染み着いてしまっているのだろう。
それ以外思いつかない怯え方だ。
「……あ……そ、その…………」
カタカタと震える自分の手を握り締めながら、池ヶ谷は必死に言葉を考えている様だった。
なんて言えばいいのか、どうすればいいのか。俺の機嫌を損ねない様に、と慌てている様だ。
「おはよう、気分どうだ?」
出来るだけ優しく頭を撫でてやる。怯えた様子で池ヶ谷は答えてくる。
「だ……大丈夫…………」
震えながら俺の手首に気が付くと、池ヶ谷の顔が一瞬にして凍り付いてしまう。カタカタと震えが酷くなりながら俺を見てきた。
「自業自得だから気にしてない」
「…………酷い傷に……」
「バレーにも支障ねぇから」
何度か手を開いて閉じてを繰り返して、指の感覚を確認する。指先に違和感はなく、あくまでも毟られた手首だけが痛んでいる。
「目立つから包帯頼む」
「うん……」
ジャラ、と鎖の音を鳴らしながら池ヶ谷が起き上がった。俺のカバンを指差せばそっと向かい、中から包帯を持って戻ってくる。
手当て慣れしているみたいでさっと両腕に包帯を巻いてしまう。が、結構な大怪我に見えてしまった。どうしても目立つ。
(仕方ないか……掻き毟られてるのそのまま出してるよりずっとマシか)
じっと両手首を見つめているので、池ヶ谷が不安そうに俺の事を見ていた。バツの悪そうな顔で罪悪感の塊だ。