【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第18章 第十五話 カタオモイ
真っ暗な部屋の中、携帯の画面光だけが光源として光る。すいすいと指先で触れながら池ヶ谷と二人、妊娠してからの事を調べ見ていた。
ネット社会は本当に凄いと膨大な情報に目を通していく。
改めて調べてみると妊娠するのはあくまでも確率論であり、20%と意外に低い事、また射精の回数は確率を上げる事には繋がらないと知る。
「やっぱり排卵日が分かると全然違うみたいだな」
チラッと横目で池ヶ谷を見ると、画面を黙って見ているが怯えた表情のままでいる。知識を得れば得る程現実味を帯びてしまうのだろう。
「伊織の生理周期で決まってんの?」
「ある程度……は」
「今月の生理は来てるか?」
「言いたくないよ……」
ギュッとシーツを握り締める手は小刻みに震えていて、きっとまだなんだろうと憶測出来た。
池ヶ谷の状況をある程度把握出来れば、排卵日予測も簡単に出来るみたいだ。
(妊娠期間は十月十日が一般的だから、もし今上手く妊娠出来たら産まれるのは五月辺りになるのか)
真剣に見過ぎていたのだろうか、池ヶ谷がそっと尋ねてきた。
「どうして今じゃないと駄目なの……?卒業したら結婚…………するから、約束守るから。他の人なんて見ないから。今じゃないと嫌なの?」
尋ねてくる声は震えていて、目に涙を溜めながら訴えている。今の関係を止めてくれ、と。
「今がいい」
「でもっ」
「今じゃなきゃ駄目なんだ」
池ヶ谷を手に入れるまで年単位じゃあ遅過ぎる。俺じゃない誰かに想いを寄せない保証はない。
もしかしたら仲が良い日向を好きになるかもしれない。しっかりとした澤村さんを好きになるかもしれない。誰からも慕われている菅原さんだって十分にあり得る。
もしもが現実になってしまうのが恐ろしくて耐えられない。
だから既成事実となる妊娠をさせて、物理的に手に入れるしか今すぐに実行出来る事がないのだ。
「今すぐに伊織との子供が欲しいんだよ」
「今すぐ、なんて…………」
キュッと口を噤み、黙り込んでしまう。暗い顔をして池ヶ谷は絶対に本音を口にしてくれない。