第54章 another:1.5

（知らない人は怖いから……知ってる人だと安心するな……）

　私の事をずぼずぼと挿入（いれ）て犯してくる相手を知りたくて仕方ない。夢とは言え私の処女を奪った初めて相手なのだから。
　薄目でぼやける視界の中、相手を見ようとした所、声が聞こえてきた。

「伊織っ……伊織っ……はぁ……」

　聞き覚えのある声。でも私は彼に名前で呼ばれた事がない。
　どうして彼なのか分からないけれど、見知った相手である事に安心して目を閉じた。

（影山……君……）

　相手が部活のチームメイトである影山君である事が分かった。
　彼が相手だったのはきっと、今日一緒に買い出しに付き合ってもらったからだ。
　最後に一緒にいた人で、友達に変にからかわれたからこんな夢を見てしまっているんだ。

（影山君と……セックス……）

　影山君とセックスするのが嫌じゃなかった。相手が影山君で良かったと思ってしまう自分に驚いてしまう。
　無意識に彼の事をそう言う目で見ていたのだろうか？彼は尊敬するチームメイトの筈なのに。

（これは夢……これは夢だから、起きたらきっと忘れてる……）

　夢は覚えてない事が殆どだから、今回も忘れる。それに忘れてくれないと、影山君に合わせる顔がないし、覚えてなんていたらもう顔を見られない。

「伊織っ伊織っ」

　ガバッと抱きついてそれでも結合部を撃ち付けるのを止めない影山君。
　余りにもリアルで生々しい夢と、押し寄せてくる挿入の快感に声が出そう。
　体格差のある影山君に抱きしめられたまま挿入されるから、腰が凄く曲がっている。少し体勢としてキツイ。
　でもこれが普通なんだろうな、とまるで経験者の様に悟る自分がいた。

「射精（で）るっ……伊織射精（で）るっ……」

　影山君がそう言ったと思うとパン！と結合部が鳴り、影山君の動きが止まった。
　結合部がぐりぐりと擦られながら、耳元で影山君の気持ち良さそうな声が聞こえる。

（中出しされてる……のかな）

　夢とは言え、まさか避妊していなく、中出しまでされてしまった。
　恥ずかしい。これ以上こんな夢を見続ける事なんて出来ない。
　影山君に対しても失礼だから……。

（目……醒さなきゃ）

　こんな夢、見た事も全部忘れなければ、と思ったらすぅっと視界が暗くなって意識を手放せた。
　夢から……醒めなければ。
（2021,3,21　飛原櫻）