【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第49章 最終話 イノチ
再び泣き出しながら、池ヶ谷は俺の手に握られている妊娠検査薬を見ていた。
そこには陽性反応のチェックに濃く、ハッキリと陽性である線が浮き出ている。
池ヶ谷が何回調べたかは分からないが、何度も同じ結果を示しているのならば、可能性ではなく確定事項で間違いないだろう。
子宮に精子を出す行為を初めてから一度も生理が来ていないのも、俺が一度も月経の経血を見ていなかったのも、そう言う事だったのならば納得だ。
生理の事は疑うタイミングは何度も合ったが、調べるに至らなかったので知るのに遅くなってしまった。
池ヶ谷に尋ねても最終生理日を吐いてくれなくて、後回し後回しで行為にばかり没頭していたのも遅くなった理由になる。
「……居るんだな………伊織の腹の中に」
「ぐすっ……」
「そうか……やっと……」
自分のお腹を大事そうに添える手に手を重ねてやった。
強く、優しく壊れ物を扱うかの様に池ヶ谷の事を抱き締めて、二度と離したくなかった。
どれ程にまで待ち望んでいたか。この為にずっとずっと身体を重ね合って精を吐き続けていたのだ。
池ヶ谷が遂に妊娠をした。
俺以外を知らないし知らせてなんてないのだから、間違いなく俺の血を引く。
子供を孕んだ母体を持つ妊婦に遂に池ヶ谷が成った。
もう池ヶ谷の身体は一人の身体ではない。まだ見ぬもう一人との二人の身体だ。
池ヶ谷の身体に、一つの命が宿った。
俺の……俺達の子供が。
やっと手に入れたくても手に入らなかったモノを、俺は手にする事が出来たのだ。
手に入らないモノを求め、遂に手に入れた幸福感に心臓が張り裂けそうだった……。
To be continued
(2021,3,5 飛原櫻)