【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第32章 第二十九話 シャチュウ
ガタンガタンと揺れる車内で聞こえるのは皆の寝息だけ。隣にいる池ヶ谷からも静かな寝息が聞こえていた。
バスに到着した時点で早い者勝ちみたいに席は決まっていた。普段の俺ならば日向の隣に座っていたが、今現在俺達の空気はあまりよくなく口数も殆どない。
何よりも池ヶ谷の隣に座りたいのだから、そのまま着いた流れで声を掛けた。
◆
「席、どうする?」
「何処でも大丈夫かなぁ?」
荷物を積みながら話していると頭上の窓が開き、ぬっと身を乗り出して西谷さんが出てきた。
「池ちゃん!俺の隣座んねー !? 」
「え?」
困惑する池ヶ谷を見ていると別の窓が開き、身を乗り出した田中さんも続けて言ってきた。
「いやいやいや!ノヤっさんの隣に座るならば俺の隣に来ねーか?」
「何だよ、龍!先に誘ったの俺だぞ !! 」
深夜とは思えないテンションで騒ぐ二人の事を池ヶ谷は苦笑いしながら見つめていた。
どうしよう、と言った表情でいる池ヶ谷を黙って見ていると、澤村さんが西谷さんと田中さん二人の服を引っ張りながら車中に引き戻して言っていた。
「何時だと思ってるんだ、お前等は!」
雷が落ちた、と思いながら見ていると乗車口から顔を覗かせてきた菅原さんが手招きをしているのだった。
「「 ? 」」
なんだろうと池ヶ谷と顔を見合ってから菅原さんの所へ向かう。まだ騒いでいる声を聞きながら。
「影山、影山」
「はい?」
ちょいちょと手招きされて近寄ると、そっと耳打ちで言われた。
「お前今殆ど日向と喋ってないから日向の隣ってやっぱり気まずいよな?」
「…………うす」
「で、さっきから西谷と田中があんな感じで五月蝿くてさ、お前と池ちゃんが気にならないだったら、二人から離れた所に座ってもらってもいいべか?」
「まぁ……全然構いませんけど」
菅原さんからの思ってもみない提案に驚きつつも、顔には一切出さずに対処する。蚊帳の外にいる池ヶ谷は不思議そうな表情で俺達の事を見守っていたらしく、菅原さんが今度は池ヶ谷に耳打ちで説明をしていた。
多分耳打ちで説明しているのは日向は西谷さん、田中さんに話の内容を聞かれたくないからだろう。……そう思わないと嫉妬心が出てしまうと理解している。
「池ちゃんもオッケーだってさ。早く中に入ろうべ」