【R18夢小説】手に入らないモノを求め【HQ/影山飛雄】
第31章 第二十八話 クチヅケ
あの角を曲がったら俺達の関係は隠されてしまう。
角にさしかかり、繋いでいた手を離して歩き出した瞬間。
「…………池ヶ谷?」
控えめだが俺の服を掴んで下を向いていた。顔が見えなくても真っ赤にしている事はすぐに分かった。きっと何時もの表情をしているのだろう、と。
「……どうした?」
「………………て……」
「?」
ぼそぼそと聞こえない声量で言われるので、向き合ってくぃっと顎を持ち上げた。
「……キス……して……」
熱の篭ったう潤んだ瞳で池ヶ谷が言った。恥ずかしそうに下を向く姿にゾクッと背筋に悪寒が走る。
俺を求める姿に酷く興奮してしまい、肩を抱き寄せると蝕む様に口付けた。
「ふぅっ……」
「……ッハァ……」
クチュ、と音を鳴らせながら何度も深く深く唇を重ね合う。絡め取った舌を吸い取る様に口内に招き入れ、かぷりと噛み付いてやるとビクッと池ヶ谷の身体が震えた。
舌を解放してやり、クプッと舌を入れると控えめに俺の舌を池ヶ谷が噛んだ。
どれ程の時間、唇を重ねていたのか分からない位に貪欲に互いを求め合った。つぅっと唾液の糸を引きながら離れ、絡め合っている手の甲に何度もチュッとキスをしてやった。
その行為を黙って見ている池ヶ谷の表情は、欲情した女の顔だ。
誰にも見せたくない、俺だけの池ヶ谷の表情に背筋がゾクリとしてしまう。
「行くぞ」
「…………うん」
名残惜しかったがスルリと離れ、たまたま出会った様に装い、何食わぬ顔で遠征バスの集合場所に到着をした。
触れぬ、触れられぬ、の地獄の一週間が始まるのだとバスの周りで騒ぐみんなの姿を見て改めて自覚をした。
(2016,4,26 飛原櫻)